スナップバックで適切な硬さを判断する

スナップバックで適切な硬さを判断する

1.ガット張上の適切な硬さとは!

ガット張りに関して、どんな硬さが適切かについてはいろいろな考え方があると思われますが、ここでは「スナップバックが機能するかどうか」という観点から、この問題を考えてみたいと思います。
(※このページでは「ストリング」のことを「ガット」といったり「ストリング」といったりと、ゴチャ混ぜになっていますが、細かいことはあまり気にせずに同じ意味としてお受取りください)

何を基準にして考えれば良いか

多くのテニスプレイヤーは「ガット張りの適切な硬さ」という言葉を聞くと「推奨テンション」を思い起こすのではないでしょうか。
でも、現実問題として、「推奨テンション」の範囲内で張るのはおすすめできません。
参照⇒「推奨テンションが適切ではない具体例」
「それだったら、使う人の好みで決めれば良いじゃないか」ということになりそうですが、これも安全ではないようです。
参照⇒「ガット張りは自分の好みで選ぶと外れる!」
というわけで、ガット張上の硬さを決める際には、多くの人が悩ましい思いをされているのではないでしょうか。
女性プレイヤーの多くは、「何となく普通くらいで」というようなオーダーになっていることが多いようですが、でも実際には、「何が普通なのかもよくわからない」というのが現実だと思います。
そこで、「適切な張上の硬さ」を考える上での一つの切り口として「スナップバックが適切に機能するかどうか」を判断の基準にすることを提案させていただきます。
「スナップバック」をキーにしてガット張りを考えれば、「適切なガット張り」という問題を考えるときに、頭の中がかなり整理しやすくなるはずです。

2.スナップバックとは

2013年頃から登場したウイルソンのスピンタイプのラケットの登場とともに市民権を得たのが、この「スナップバック」という言葉で、その意味は、「インパクトでボールが当たったときにストリングが動くことでボールがストリング面に食い付き(図1)、その動いたストリングが戻ることで打球に勢いと回転が与えられる(図2)」ということです。
テニスのガットのスナップバック機能
そこに注目して、ストリングの可動域を広げるために縦横の本数を減らしたラケットが「スピンタイプ」(Sタイプ)というもので、他の各社からも続々と発売されました。
「もっとスピンをかけたい」という望みは多くのプレイヤーが持っているようで、こうしたシリーズも一時期は人気を博したのですが、その後は下火になりつつあるようです。
ただ、この「スナップバック」については、実際にはスピンタイプのラケットが出る前から注目されており、「動いて戻ること」が「食いつき」と「スピン」の両方をもたらすことについては、ある程度知られていました。

3.スナップバックが発生しないとどうなるか

スナップバック機能の停止実験

テニスラケットのストリングは、テニスコートのネットなどと違って、交差するポイントがしっかりと固定されずに編んだままの状態で張られています。
ですから、縦横のストリングがそれぞれ動ける状態になっているわけです。
それについて、テニスワンでは「スナップバック機能を停止させた実験」というのを以前やったことがあります。
その内容は簡単で、縦横のストリングの交差する点を瞬間接着剤で固定して動かないようにしてボールを打つというものです。

スナップバックが機能しないと打球はどうなるのか

そのラケットで打つと、インパクトでボールをつかまえる感覚が減少して、ボールがストリング面からスルッとこぼれるような飛び方をするので結果的にネットが増えます。
そうするとプレイヤーは、不用意なネットを防ごうとして打球を上方向に打ち出すようになります。
さらに、ストリングが動かないと、それが戻るときにスピンがかかる機能が働かないので、回転がかかりにくくなって打球がスッポ抜けやすくなります。
こんな形で、上方向に打ち出された打球の回転が不足すれば、当然ですが、スッポ抜けのアウトが増えます。
ということで、この実験によって、ストリングの動きは「打球のコントロール」や「ミスの出方」に大きく影響することがわかりました。

4.張りの硬さとスナップバックの関係について

張りが硬いと動かない

インパクトでボールがストリング面にぶつかることでストリングが動きますが、その動く量は張上の硬さによって変わります
当然ですが、硬く張るとあまり動かず、柔らかく張ると大きく動くわけです。
そして、ストリングが動きにくい状態ではスナップバックは適切に機能しないのでインパクトでボールをつかまえる感じが減ります。
ストリングが戻るためには、その前に動かなければならないので、張りが硬くて動かない状態では最初からスナップバックは機能しません
ですから、ストリングが動きにくくて打球がスッポ抜ける場合は張りが硬すぎると判断できるわけで、そうなる手前までが「硬く張る場合のテンションの上限」と考えて良いでしょう。

柔らかくても戻らない

逆に、柔らかく張れば動きやすいのですが、ある範囲を超えて柔らかすぎると「行ったきりの状態」になって戻って来ないので、やはりスナップバックが発生しません。
柔らかすぎると元の位置まで戻る力が弱くなってしまうのです。
ストリングが戻らないと、ボールを打ち出すパワーが減り、回転もかかりにくくなります。
ですから、動いたストリングが戻らずに寄ったままになるのはのは張りが柔らかすぎるので、その手前のきちんと戻る硬さが「柔らかく張る場合のテンションの下限」だと考えてみてはいかがでしょうか。

戻らないときはストリングの反応が安定しない

さらに、ストリングが戻らない場合というのは、全く戻らなかったり、多少は戻るけれどその戻り幅はそのとき次第だったりというように、ストリングアクションが一定でなくなります。
そうすると、その影響で打球の飛び出し角度や回転量が変ります。ですから、同じスイングをしていても球筋がバラつくわけです。
でも、そういう状態でも、プレイヤー自身が「球筋が安定しないのはストリングアクションがバラつくせいだ」と考えることはほとんど無いので、「自分の調子のせい」になってしまうことが多いようです。

スナップバックの発生状態で
適正テンションの範囲を考える

スナップバックを適切に機能させるには、「動いて戻る適度な硬さ」が必要です。
それより硬くても柔らかくてもスナップバックが うまく機能せず、打球のコントロールが難しくなるわけです。
スナップバックがきちんと発生するかどうかは、指でガットをずらしてみればすぐわかります。
指が痛くなるくらいまで動かないのは硬すぎです。
また、ポリ系のガットも、素材がナイロンより硬く伸び縮みが少ないので動きにくいでしょう。
指でガットを動かしてから指を離したときに「パチン」と戻るのが最高の状態です。
ということで、「スナップバックが適度に発生するかどうか」をチェックポイントにして、使用するテンションの上限と下限を決めれば、打球のコントロールが安定しやすくなるので、それが実質的な「適正テンション範囲」だとお考えいただければと思います。
使い込んだストリングは表面がザラザラになるので、そういう状態ではスナップバックが起きにくくなるのは避けられませんが、張り上げ直後のストリングが動かなかったり、戻らなかったりしたときは、「適正な硬さの範囲を外れたかも!」と疑ってみるのも方法の一つだと思います。

プレー条件の変化とスナップバックの関係

スナップバックがきちんと機能する硬さが「適切な硬さ」だとしても、実際問題として、それはワンパターンではありません。
プレイヤーのスイングスピードや相手プレイヤーの打球スピードラケットの特性ストリングの特性コート環境など、さまざまな条件が変わればスナップバックの発生状態も変化するので、それに応じてスナップバックをきちんと機能させるための「適切な硬さ」も変化します。
ただ、プレイヤーの体調やプレー環境の変化に対応したアジャストが必要だとしても、スナップバックがきちんと機能する硬さの範囲にはある程度の制限があるため、プレイヤーの好みで決めるよりその適切な範囲は狭いということを忘れないでください。
スナップバックが適切に機能しているときは、順回転が効率良くかかるので大胆に振り抜いたほうが球筋が安定します。
そうしたスナップバックの発生状態に注目すると適切な硬さについての考えを整理しやすくなると思います。
次のページは「プレー条件の変化に対応した適切な硬さ!」です。
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