テニスのショットは「入り」が命
テニスのショットは「入り」が命
あわてないことが肝心
人は誰でも、あわてて何かをしようとすると、思わぬミスを犯すことが多いのではないでしょうか。
締め切り時間がせまってあわててしまうと、きちんとした手順を踏めずに途中をはしょったりして、いい加減な結果になるわけです。
テニスの場合も、十分な時間があって打つときと時間が無くてあわてて打つときとでは、後者のほうが圧倒的にミスが増えるのは間違いないでしょう。
あわてないから上級者
さらに、テニスでは締め切り時間がとても早く、相手が打ってからこちらが打つまでに使える時間は通常1〜2秒しかありません。
そんな短い時間ではあわてないほうがおかしいくらいですが、でも実際には、あわてる人が居る一方で全くあわてない人も居ます。
そして、その「あわてない人」とは具体的に言うと上級者です。
これは、上級者だからあわてないのではなく、あわてないから上級者だと言うほうが正しいかもしれません。
上級者の特徴として、打つ前にちょっとした「間」があることが多いのですが、そんなふうに時間を使うことができればミスが格段に減るのは当然です。
ゆっくり動いて間に合う人
私が行っているテニスクラブの知り合いに、がんから生還した80歳弱のベテランプレイヤーが居て、その人のプレーを見ていると、当然、体力の低下で動きはゆっくりなのですが、それで遅れることなく、特にあわてることもなく、正確なインパクトで伸びのあるボールを打っています。
そんなことができる理由はシンプルで、とにかく動き出しが早いのです。
言い換えれば、遅い動きで間に合うためにはそれしか方法がないわけです。
一般的には、相手が打ったらその球筋を見極めてから動き出すというパターンが多いとすれば、その人は、相手が打ったときにはすでに動いているという印象です。
ボールの動きとの同調
ですから、上級者とそうでない人との大きな違いは打ち方とかの技術ではなく、ボールへの「入り」の早さ(時間の使い方)だと言って良いと思います。
ただ、当然ですが、とにかく早く動けばいいというわけではなく、「ボールの動きに同調して動くこと」が不可欠なのは言うまでもありません。
プレイヤーが勝手に「早く動こう!」と決断してスタートしても、そんな自分本位のアクションではボールの動きとの同調が途切れて、タイミングを合わせるのがかえって難しくなります。
必要なのは、勝手に早く動き始めることではなく、ボールの動きと自分の身体の動きが同調し始めるタイミングを早めることです。
つまり、相手が打ってから同調し始めるのではなく、相手が打つ前からボールの動きに同調し始めれば相手が打ったときには動いている状態になります。
具体的には、ストロークであれば、こちらの打球が相手コートで着地した瞬間をスタートの合図にすれば、相手のインパクトではすでに動いている状態になり、相手が打ったボールを見ながら「ちゃんと返そう」と考えているより、「入り」が早くなります。
相手がボレーのときは、自分が打ったことで見失った打球をできるだけ早く見つけて、相手のラケットフェースに当たる前からボールが見えていれば、打たれたボールへの「入り」が早くなります。
もちろん、こんなことで早くなると言っても、その差はコンマ何秒というほんのわずかな時間です。
でも、そのほんのわずかな時間が「打っていく」のと「打たされる」の違いを生みます。
予測で解決しようとすると外れる
相手の打球に対して早く動き始めることが大事と聞くと、「それじゃ予測して早めに動けば良い」と考える方がいるかもしれません。
相手の打つ前の動きからコースを予測するわけですが、この方法では予測が外れると即アウトです。
さらに、予測するには相手の動きに注目することが必要ですが、そうすると相手が打った瞬間に相手からボールに視線を移すことになって、打ち出されたボールを見始めるタイミングが遅くなり、次にボールが見えたときは、そのボールがネットを越えているケースが多くなるでしょう。
それより、最初からボールの出処に目の焦点を合わせておくほうが身体の反応が早くなります。
気持ちが大事—「返そう」より「打ち込もう」
「大事に!」とか「ちゃんと返そう」とか「遅れないように」などと考えていると、その時点ですでに受け身の態勢になっているので、まずは相手の球筋を見極めようとするため「相手が打ってから動き出す状態」になります。
そうすると、ボールへの「入り」が遅れて差し込まれながら打つケースが多くなります。
ですから、「ちゃんと返そう」とするより、どんなボールが来ても「あそこに打ち込んでやろう」くらいの積極的な気持ちでいるほうが、ほんのわずかにボールへの「入り」が早くなるようです。
ぜひ、お試しいただければと存じます。