集中状態への入り方

テニスのプレーにおける
集中状態へのルート

自分の体は自分の意志で操作できると考えていると、「意識的な身体操作」と「無意識的な自動実行能力」との主導権争いに明け暮れることになる。—–ということについて「無意識的な自動実行能力」で書きましたが、この記事はその続きです。

練習の目的

練習の目的は、いろいろな「無意識的な自動実行能力」を身体の中にため込むことであり、意識して体を動かそうとしなくても、飛んでくるボールに体が自然に反応して無意識的に打てるようになることが練習の成果です。

ですが、その反対で、「意識的な身体操作」が上手くできるようになることが、練習の目的だと思っている方も少なくありません。

この二つの取り組みでは目指す方向がまったく違うので、同じ数だけボールを打っても得られる成果は全く違ってしまうでしょう。

試合になると普段できることができない

試合になると動きが硬くなって、普段できることができなくなってしまうという方も多いのですが、これは「何とかして勝ちたい」⇒「ミスが出ないようにきちんと身体を動かそう」という経緯で、「意識的な身体操作」が主役になってしまうからではないかと思われます。

普段何気なくやっていることを、改めて意識的にやろうとすると、急に「あれっ、どうやるんだっけ」と思うことって結構ありませんか。それと同じような感じです。

普段は「無意識的な自動実行能力」に任せて何気なくプレーしていたのに、試合になると急に「意識」が主導権を握って身体を動かそうとするので、手足の動きがバラバラになって上手く打てなくなるのです。
自分が上手くプレーするのを邪魔しているのは、相手のプレイヤーではなく、「何とかしよう」という自分自身の「意識」であることが多いのです。

慣れれば何も考えずに曲がれる

自転車に乗り慣れた人は、カーブに差しかかるとそれを見ただけで曲がれます。
その時にやっていることは、安全に曲がれるくらいのスピードに減速した上で、そのスピードに合った傾きを維持しながら微妙にハンドルを切ったりということですが、やっている本人はそんなことを考えもしないでしょう。

自転車に乗り始めた頃は、カーブに差しかかると「何かしないと曲がらない」と思うため、意識的にハンドルを切ってグラついたりしますが、慣れてくればカーブを見ているだけで、自然に曲がれるようになります。

意識的にやろうとするからできなくなる

テニスの場合も、練習の積み重ねによって意識を使わずに自動的に打てるようになるのですが、そうなってからでも、緊張したり、フォームの改善に取り組んだりすると、意識的に身体の各部分を動かそうとし始めます。

自転車で言えば、放っておけば、カーブを見ているだけで曲がれるはずなのに、わざわざ速度調節や傾き加減を意識的に調節するようなものなので、ギクシャクした動きになるのは避けられません。
自然にできることを、意識的にやろうとするから上手くできなくなるわけで、せっかく練習によって積み上げられてきた自動化した動きがバラバラになってしまいます。

意識は身体の各部分を総合的に動かすことには向いていない

人間の意識は何かに集中すると他のことがおろそかになる傾向があり、そのため、身体の各部分を同時に総合的に動かすことにはあまり向いていません。
足を動かそうと考えると手が止まり、手を動かそうとすると足が止まるというようなことが起きやすいのです。

初めてサーブの練習をした時のことを思い出してみて下さい。
ラケットスイングができるようになっても、正しくトスを上げようとするとラケットが動いていなかったり、両手がうまく動いても膝が伸びたままで屈伸が使えなかったり、というようなことがあったと思います。

それが、練習の積み重ねによって、左右の手と身体のひねり、足の屈伸などが自動的かつ総合的に動くようになるのですが、そうした状態になってからも、テイクバックのしかたを変えようとするとトスが上がらなかったりします。
身体の各部分の動きを調和させるには、あまり頭を使わないほうが良いのです。

ミスの原因

多くの場合、失敗したときには「打ち方」が悪かったと考えてしまいます。
そして、次のミスを防ぐために打ち方を修正しようとします。
ミスした後に「もっとこういうふうに振れば良かった」という感じで、プレー中に素振りをする姿をよく見かけます。
これが、「自動実行」が「手動」(意識操作)に切り替わるスイッチとなります。

手動に切り替えても上手くいかないことはこれまで述べてきましたが、それでは、どこに解決策があるのでしょうか。

失敗したのは「やり方に問題があった」と考えることが、多くの間違った取り組みのスタートラインになってしまうようですが、多くの失敗には、「やり方以前」にその原因があるのです。

打つ前の問題

プレー上のミスを「工場の不良品」に例えてみます。
不良品が出たときは生産体制に問題はなかったかとチェックしますが、その前の段階に手落ちはなかったかというチェックが必要なのです。
例えば、注文の内容を良く聞いていなかったとか、生産に必要な材料が不足していたとかのことがあると、生産体制(やり方)をいくら改善しても不良品は無くならないでしょう。

テニスの場合もこうしたことが少なくありません。
ミスしたときの身体の動きをチェックするより、その前段階に手落ちがあって、それがミスの原因になっていることが少なくないのです。

2つの手落ち

前段階での手落ちは次の2つに大別できます。
1.「無意識的な自動実行能力」に任せきっていない
2.「無意識的な自動実行能力」が適切に機能するために必要な「材料」を与えていない

1.「無意識的な自動実行能力」に任せきっていない

意識が邪魔をして「無意識的な自動実行能力」の機能を低下させるということについては、これまでいろいろなケースを例にとって書いてきましたが、意識的に身体を動かすという慣れ親しんだやり方を全面的に放棄するのは難しいようです。
そのため、ちょっとしたミスがきっかけで意識が打ち方の修正に向かってしまい、「こうかな?」「それともこうかな?」などと始まってしまうのです。

「意識的な身体操作」と「無意識的な自動実行能力」とが共存する形になると、主導権が行ったり来たりしてプレーが不安定になります。
部下に仕事を任せても横からチョコチョコと口出しするダメ上司のようなやり方では、部下との信頼関係は生まれませんし、それが失敗の原因になるのです。

「無意識的な自動実行能力」がちゃんと機能するためには「信頼して任せきる」ことが必要です。

2.「無意識的な自動実行能力」が適切に機能するために必要な「材料」を与えていない

「無意識的な自動実行能力」が適切に機能するために必要な材料とは、大きくは次の2つに分けることができます。
一つは「ボールの情報」で、もう一つは「ターゲット」です。

ボールの情報が無い

どんなに優れた「無意識的な自動実行能力」を練習によって身につけても、プレイヤーが目を閉じていたらうまく打てないでしょう。
そんな極端なことは実際にはないだろうと思われるかもしれませんが、現実的にはこれに近いことがあるのです。
それは、「見ているようで見えていない」という状態で、意識がボール以外の別なところに行ってしまっていると、こういう状態になります。
別なところとは、自分の身体の動かし方だったり、相手選手の動きだったり、これから打とうとする場所だったり、コーチや観客の視線だったり、勝ったらどうしようとか、負けたらどうしようとかいう思いだったりするわけですが、こういうところに意識が向いている状態ではボールをただ漫然と眺めているだけなので、「無意識的な自動実行能力」がタイムリーに反応するためのスイッチが入りません。

ターゲットが無い

また工場の例ですが、どういう製品を造るのかが明確になっていないと、いくら現場を叱咤激励しても良い製品は造れません。
それと同じようにテニスのプレーでも、どこにどういうショットを打つのかが明確になっていないと、適切な動きは生まれません。
「無意識的な自動実行能力」が上手く機能するためには、「目的」が示されなければならないのです。
狙いがハッキリしていない状態でプレーするということは、仕事の方向性をハッキリ示されないまま責任だけを上司から押しつけられるようなもので、何をどうしたらいいのか分からないまま取りかかっても上手くいきません。

どこにどういうボールを打ち込みたいのかがハッキリしていれば、その目的に添った動きを「無意識的な自動実行能力」が選択します。
目的を示さずに打ち方だけをあれこれ工夫しても成果は得られないのですが、このパターンの練習に時間を費やしているケースが少なくありません。
手段を改善しようとするより、目的をハッキリさせるほうが先なのです。

苦手

特に、不得意なショットでは、このターゲット設定が全くなされていないことが良くあります。
苦手なショット程、失敗を恐れて身体操作の命令が強まる傾向があり、さまざまな指示が頭の中を駆けめぐります。
そのため、失敗しないように打ち返すことで頭が一杯になって、どこを狙うかなどという余裕は持てなくなってしまうのです。

ダブルフォールトを繰り返した後のセカンドサーブなどでもこういう状態になります。
「とにかく大事に入れよう」ということで頭が一杯になり、狙いなど考えられないのです。
そしてその状態が次の失敗の原因になるのです。

得意なショットではターゲット設定が普通にできているので、「無意識的な自動実行能力」も、それに向かって合理的な動きができるのですが、不得意なショットでは、「失敗したくない」という曖昧な目標しか与えられないため、具体的に何をどうしたら良いか分からないまま打たねばならないので、失敗しやすいのです。

「苦手だ」と思うから失敗して、失敗すると苦手を再認識して、さらに・・・。
こういう過程で、「不得意なショット」はその地位を固めていきます。
つまり、「苦手」の原因は身体の動きにあるのではなく、自分の意識にあるのです。

主役は誰?

ミスを減らしてプレーパフォーマンスを上げるためには、「無意識的な自動実行能力」が上手く機能するような状態に持っていくことが必要で、そのことこそが「意識」の取り組むべきことなのです。
「ボールの情報」と「ターゲット」を安定的に「無意識的な自動実行能力」に供給し続け、なおかつ、その自由な活動を邪魔しないことが「意識」の役割です。

つまり、「無意識的な自動実行能力」がプレーの主役で、「意識」は黒子なのです。

ミスが発生したときは、その黒子の役割が上手く果たせていなかったことを反省するべきです。
「無意識的な自動実行能力」を隅に追いやって、「意識」が自ら身体操作に乗り出すことは、最も避けねばならないことなのです。

集中状態へのルート

集中してプレーしている状態というのは、頭の中でいろいろな言葉が行き来して、身体に命令を下し続けている状態のことをいうのではありません。

頭の中が空っぽの状態で、身体が自動的に動いてしまう状態のことです。
頭の中は何の声も聞こえずにシーンとした状態で、そこに打球音だけが響いていて、ボールがインパクトの瞬間だけスローモーションで動くのが見えるというようなイメージです。

そういう状態を誰もがたまには経験するのですが、それは偶然そうなっただけで、意識的にそういう状態を手に入れたわけではないために、ごくまれにしかそういう状態が訪れないのです。
それに対して、強い選手はその状態に入るのが上手く、安定的にその状態を維持します。

単にボールを打つだけの練習を積み重ねるより、集中状態に確実に入るルートを自分のものにする練習をしたほうが、勝ちやすくなるのは間違いないでしょう。

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◇ボールが面からこぼれてネット
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◇スピンで押さえ込めずに浮いてアウト
さらに、インパクトで動いたガットが戻るときに順回転がかかるので、ガットが戻らないと回転が安定せずスッポ抜けのアウトが出やすくなります。逆に、確実に回転がかかればショートクロスやスピンロブなどが打ちやすくなります。
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