ポリとナイロンどちらを選ぶ

ガットの知識応用編
「ポリとナイロン」について

「切断耐久性」と「性能維持性」

上記の見出しに「耐久性」ではなく、「切断」を足して「切断耐久性」と書くのにはワケが有ります。
ストリングの「切断耐久性」を単に「耐久性」だと考えてしまうと、「切れずに使える=丈夫で長持ち」と受け取られてしまいそうなのですが、「切れずに使える」の中の「切れない」のと「使える」については分けて考えたほうが良いでしょう。
つまり、「切れない=摩耗に強い」と「快適に使える」は全く別の問題で、切れなくても伸びてしまえば、それは「切断耐久性」が高くても「性能維持性」が低い=長持ちではないということになります。
逆に、切れやすいけれど、切れる寸前までは快適に打てるということであれば、「切断耐久性」が低くても「性能維持性」は高いということになります。

両立は難しい

この二つの要素が両立すれば最高なのですが、実際にはそんなうまい話はないワケで、どちらを優先して選ぶかという二択の判断を迫られることになります。
言い換えれば、切れないという「経済性」を優先するか、性能が劣化しないという「機能性」を優先するかということで、「コスト」か「パフォーマンス」かのどちらを選ぶかという選択です。
そして、「切断耐久性」の高さではポリ系ストリングがダントツで、「性能維持性」の高さではナチュラルガットに軍配が上がります。

ポリとナイロンの
どちらを選ぶべきか

ここ数年、ポリ系ストリングがシェアを伸ばしてきていますが、その理由の一つには、プロの使用率の高さがあると思われます。
ですが、テニスワンでは、ポリの使用を一般のプレイヤーにはあまりお勧めしていません。
その理由は「飛びが悪い」ことにあります。

テニスワンでは、長年にわたってラケットフィッティングを実施してきているため、これまで20,000名以上の方の試打する様子を見てきましたが、どんなハードヒッターであっても、ナイロンよりポリのほうが打球の勢いが増すというケースは残念ながら見たことがありません。
(※もちろんこれは、市販のラケットを使っている一般プレイヤーについての話です。)

切れにくさの代償

ポリ系ストリングの最大のメリットは、切断耐久性の高さにあると思います。
ですから、ナイロンガットだと1~2ヶ月以内に切ってしまうプレイヤーにとってはとてもありがたい特性です。
でも、切れにくいということは磨耗に強いということで、それはつまり「固い」ということであり、さらには、「伸縮性が低い=伸び縮みしにくい」という特性も付いてきます。

柔らかいものはキズがつきやすく、キズがつきにくいものは素材が固いというのが世の中の常識ですが、それと同じで、「しなやかに伸び縮みする」という特性と「摩耗しにくい」という特性を両立させるのは困難です。
そのため、ポリ系ストリングは、個々のアイテム毎に程度の差はあっても、基本的にナイロン系ストリングより伸縮性が低く、だからこそ飛びが悪いのです。

ポリは、その素材特性から商品開発のスピードが早いため、性能の改善が進んではいますが、ナイロン系ストリング並みの軽快な弾き感を持ったものは、残念ながらまだ見つけられません。
新製品のポリが発売されるたびに「高い反発力」と「柔らかい打球感」「伸びにくい」などのセールスワードが、もれなくと言っていいほど、どのアイテムにも付くのですが、それはつまり、ポリの基本特性が「反発力が低くて、打球感が硬く、伸びやすい」ことの証明だとも言えます。

そのため、耐久性の向上というメリットの裏側には、それなりの代償が必ずあるということを知っておく必要があります。
ですから、切断耐久性の高さがあまりメリットにならない人、つまり、それほど早くガットが切れない人にとっては、ポリを選ぶということはメリットがないのに飛びの悪さという代償だけを払うことになります。
また、「飛びが悪い」という特性を「不用意なアウトが防げる」という側面に着目して、ポリ系ストリングの利点の一つに挙げる方も居ますが、飛びが悪くてコートに入っている打球に相手を圧倒するような勢いがあるはずはないので、これはメリットと考えないほうが無難でしょう。

参照⇒ストリングで飛びを抑えるのは損!
打球がアウトしやすいと感じると、多くのプレイヤーは張りを硬くして飛びを抑えようとします。でもそれは、逆効果になる可能性が高いでしょう。なぜなら、アウトが出やすいのは飛ばすように打っているからで、そういう打ち方になるのはラケットの飛びが悪いからです。振り抜いて抑え込めるセッティングがベストです。

ポリのデメリット

ガットの素材の伸縮性が低いと飛びが悪くなり、その影響で打球衝撃が強くなります。
そして、打球衝撃が強いと本人は「しっかり打っている」という気がするのですが、力を入れてしっかり打てば打つほど打球は失速して軽くなります。
この、打球衝撃に負けまいとして「力を入れてしっかり打つ」という状態に陥りやすいことが、ポリ系ストリングの最大のデメリットであり、この状態に陥ると、力を入れてハードヒットしている割に打球が軽くて威力がないという症状につながります。

ポリを使い続けているプレイヤーの多くは「ポリの打球感」を気に入っているようなのですが、そこに落とし穴が隠れているかもしれません。
というのも、打球感の好みでガットを選ぶと打球が失速するリスクを背負う可能性があるからです。

参照⇒ガットを好みで選ぶと外れる!
好きな感触を求めてガット張りを工夫している方が多いようですが、その方向では戦力ダウンにつながる可能性があります。打球感でセッティングを決めると伝達ロスが大きくなることが多いので、感触の好みより「打球の状態」を観察して「勝ちやすいストリングの状態」を探すべきでしょう。

打球感は無いほうが良い

プレイヤーのスイングパワーが100%打球に伝わったとき打球感は消えます。
野球やゴルフなどでよく言われる「打った感じがしなかった」というあれです。

これを「エネルギー伝達」の面から見るとこんな感じです。
プレイヤーのスイングパワーはボールを飛ばすことに使われますが、それと同時に、打球衝撃の発生によってもある程度消費されます。
そして、打球衝撃が強ければ強いほど、そこで消費されるエネルギーが大きくなるので、その分、飛んで行くボールのパワーは小さくなります。
フレームショットをすると強い打球衝撃が発生しますが、その時の打球には勢いがありません。それと同じです。
式で書くとこんな感じです。
「スイングパワー」=「打球衝撃」+「打球のパワー」
⇒「スイングパワー」-「打球衝撃」=「打球のパワー」
ここで、打球衝撃がゼロだったら「スイングパワー」=「打球のパワー」になるので、「打った感じがしなかった」=「最高のショット」になるわけです。

そして、プレイヤーが軽快に振り抜くことを邪魔する「ボールの抵抗=打球衝撃」が小さくなれば、打点を通り抜けるラケットヘッドのスピードが上がり、打球の伸びと回転力が増します。
力みのないリラックスしたスイングで伸びのあるショットを打つためには「打球感は無いほうが良い」わけです。

3ヶ月持つかどうかが判断の分かれ目

ガットの切れやすさへの対応は、コスト感覚の問題なので、人によってさまざまだと思います。
でも、一応の目安としては、1~2ヶ月以内に切れてしまう場合はポリが選択肢に入ると思いますが、3ヶ月以上持つのであればナイロンのほうが無難だと言えるでしょう。
普通のナイロンガットでも3ヶ月以上使えば張替を検討する時期なので、そういう場合は切れにくいという理由でポリを選ぶ必要がないと言えます。

ハイブリッドという選択

ちょっとの練習ですぐにガットが切れてしまうような状態ではポリの採用が検討されるのですが、でも、そこですぐにポリ100%にしてしまうのではなく、そこにハイブリッドという1ステップを挟んでいただくと大幅な戦力低下を防げるかもしれません。
ナイロンではすぐに切れてしまうという場合、次に検討されるのがナイロンとポリのハイブリッドです。
これについては切断耐久性の順位と反発性のそれぞれについて、以下のような順位付けがされます。

切断耐久性については以下のような順序です。
【ナイロン100%】<【メイン:ナイロン+クロス:ポリ】<【メイン:ポリ+クロス:ナイロン】<【ポリ100%】
反発力については以下のような順序です。
【ナイロン100%】>【メイン:ナイロン+クロス:ポリ】>【メイン:ポリ+クロス:ナイロン】>【ポリ100%】
ご覧のように、「>」の向きが変わっているだけで、順序は同じです。
つまり、切断耐久性と反発力は反比例するということです。

同じ感じで耐久性の良いものは?

使用しているガットの打球フィーリングは気に入っているが、切れるのが少し早いと感じるケースなどで、「打球フィーリングはこのままでもう少し切れにくいガットはないのか?」という質問を受けることがあります。
でも、残念ながら、「そういうガットはありません」というのがその質問の答えです。

過去に、非常にソフトな打球感が特徴のマルチ系ナイロンストリングがあったのですが、切れやすいのを気にしたメーカーが、表面素材を強化して切れにくく改良したアイテムに切り替えたところ、それまで人気アイテムだったのに一気に売れなくなってしまったというケースがあります。
メーカー自身は、商品を改良したのだからもっと売れるだろうと考えたようですが、それまでの人気が一瞬で消えてなくなったのです。
でも、これは当然の結果で、一番の特徴であった「マイルドな打球感」が、表面素材を強化したことで失われてしまったからです。

現状では、打球フィーリングを変えずに耐摩耗性だけ向上させるという技術は開発されていないようで、「表面強度の向上⇒打球感の硬質化」という組み合わせからは逃れられないようです。

雨対策でナイロンは不可

ナチュラルガットを使用している人は、雨の日用のバージョンとして、同じフレームにナイロンストリングを張っているケースがよくあるようです。
でも残念ながら、ナイロンガットは雨対策としては適切ではありません。なぜなら、ナイロンガットは一度濡れると性能が劣化してしまうからです。

ナイロン繊維には吸水性、つまり、水分を吸収する性質があります。
そして、水分を吸収すると引っ張り強度が落ちて伸びやすくなります。
フレームに張られたストリングには強い力で引っ張られているので、一旦水分を吸ったナイロンは伸びてしまうため、乾かしても元の状態には戻りません。
ですから、雨の日くらいしか使わないストリングが、雨で伸びてしまってはもったいないわけです。

それに対して、ポリエステル系ストリングには吸水性はありません。ですから、雨の日用としてはポリのほうが良いわけです。
でも、雨で水分を吸ったボールは重くなるので飛びにくくなります。
※TENNIS-ONEの実験ではボールの重さが3割増しになりました。

重くて飛びにくいボールを飛びの出にくいポリで打つのはしんどいので、雨の日用のラケットは同じモデルにこだわらずに、フレームから取り替えたほうが良いかもしれません。
ポリでも楽に飛ぶくらいパワーのあるラケットに替えたほうが、雨の日用としては適切なわけです。

いつもと違うラケットを使うことには抵抗を感じるかもしれませんが、3割も重量が重くなったボールを使う場合、いつもと同じスポーツとは言えないので、いつものラケットに固執する必要はないと思われます。
水しぶきを上げて飛んでくるボールを打ち返すには、厚くてフェース面積の大きいモデルに細めのポリを柔らかく張ったラケットが最適と言えるでしょう。

結論!検証が不可欠!

フレームに比べて軽視されがちなガットですが、ガット張りの影響は戦力を大きく左右します。
同じ力で打ってもガット張り次第で打球の勢いが変わりますが、その影響で、打球の勢いが出にくいセッティングではプレイヤーの負担が大きくなる傾向があります。
なぜなら、打っている割に打球の勢いがないと、もっと力を入れて打とうとするので運動が強くなるからです。
そして、プレイヤーの運動強度が増すのに反して、打球の勢いはさらに低下してボールが行かなくなります。
「飛びの悪いセッティング⇒ボールが行かない⇒強く打とうとする⇒もっと行かなくなる⇒もっと強く打とうとする」という悪循環に陥るわけです。
このように、力を入れて一生懸命に打っているとプレイヤー自身は達成感を覚えるのですが、戦力的には不利な状況だと言えます。

そうした事態を回避するには、「セッティングの比較」が必要です。
同じスイングウェイトの同じラケットを用意して、異なる種類のガットを張ったり、同じガットでも硬さを変えたりして打ってみれば良いのですが、ただ打つだけでは結論が出ないので同じ相手とゲームをすれば一目瞭然です。
できれば、ダブルスよりシングルスのほうが打球の勢いが勝敗に直結するので判断材料としては適しています。

具体的な判断はとても簡単で、「頑張らなくても勝ってしまうセッティング」と「頑張っても負けてしまうセッティング」を見分ければいいのです。
格上の相手に理由もわからずに勝ってしまうのは、こちらの打球に伸びがあるからで、相手のつまらないミスが増えるからです。
逆に、格下の相手に対して頑張っても負けてしまうのは、頑張っている時点でパワーロスしているということです。

ボールの飛びは気温の影響を強く受けるので、「最近調子が悪い」などというときは、同じガットで硬さの違うものを打ち比べて、相手の変なミスが増えるセッティングを探すという方法が有効です。
不調の原因は技術的なものなどではなく、セッティングが気温環境に合わなくなっていただけというケースは、現実的にとても多いのです。

プレイヤーの好みと実際の戦力は一致しないことが多いので、戦力を判断基準にしてセッティングを選べば一番勝ちやすい状態が見つけられるわけです。ぜひ、やってみてください。

GUT LIVEなんて必要ない![広告]
ガットの動きが悪いせいで起こるネットやアウトを、全部自分のせいだと思いたい人には、GUT LIVEは必要ありません。
◇ボールが面からこぼれてネット
ガットが動かないと「食い付き感」が生まれないので、インパクトでボールをつかまえられずにポロッとこぼれてネットすることが多くなります。そう、あの惜しいネットは食いつかないガットのせいで、自分のせいではなかったかもしれないのです。
◇スピンで押さえ込めずに浮いてアウト
さらに、インパクトで動いたガットが戻るときに順回転がかかるので、ガットが戻らないと回転が安定せずスッポ抜けのアウトが出やすくなります。逆に、確実に回転がかかればショートクロスやスピンロブなどが打ちやすくなります。
◇打球の深さがバラバラ
ガットの動きが安定せずに、ボールインパクトで動いたり動かなかったり、戻ったり戻らなかったりすれば、フェースから打ち出される打球の角度が毎回変わるので、その影響で打ショットの深さが不安定になります。

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