テニスのショットは無意識的な反射運動

テニスのショットは無意識的な反射運動

「テニスのショットは無意識的な反射運動」などと急に言われても、「そんなことは聞いたことがない」という方がほとんどだと思います。
でも、これはまぎれもない事実です。

なぜなら、テニスは「意識的に動いていては間に合わないスポーツ」だからです。

練習時間をムダにせずに、効率良くうまくなるためには、このことをきちんと理解することが必要です。

無意識的な運動

「無意識的な運動」といっても、意識が無くてモウロウとしている状態の運動ということではありません。

意図的に身体を動かすのではなく、考えなくても身体が反射的に動くような状態ということです。

「無意識」というと何だかあやしい感じもしますが、「意図的ではない」という程度の意味です。

また、「無意識的な運動」という言葉に抵抗がある方は、表現を変えて「身体で覚えた運動」と言い換えると「なんだ、そうか!」と思われるかもしれません。

意外に身近な「無意識的な運動」

現実問題として、「テニスのプレーは無意識的な動きで構成されている」などと考えている人はとても少なく、「プレー中は意識がハッキリしているので、無意識になるなんてことはあり得ない」と思っている方がほとんどでしょう。

そういう方にとっては、ちょっと取っ付きにくい感じがする「無意識的な動き」ですが、実は意外に身近なことで、日常生活のさまざまな局面で普通に行われています。

その代表例は「歩く」という行為です。

歩き慣れているから考えなくても歩ける

歩いているときに、歩くという行為を意識的にやっている方は、普段はあまり見かけません。

考え事をするためにわざわざ歩くこともあるくらいで、歩いているときには、歩くこと以外の何か他のことを考えている人がほとんどでしょう。

歩くときには誰でも、「左手を前に出しながら右足を前に出して、出した右足に体重を移して」などと身体の各部分を意識的に動かさなくても、目的のところを思い浮かべるだけでそこまで行けます。

特に意識して歩かなくても、4本の手足が自動的に動いてくれるわけです。

これが、「無意識的な動き」ということで、「特に考えなくてもできること」という意味です。

ですから、無意識運動とは「意識がハッキリしていない状態で行われる運動」ということではなく、「意図的に身体を動かさなくてもできる運動」ということです。

生まれ落ちてハイハイを卒業してから、ほとんどの人は毎日欠かさず歩いてきたので、「歩く」という行為は誰にとっても最も慣れ親しんだ運動だと言えるでしょう。

「長い間やり続けて慣れているから考えなくてもできるようになった」わけで、頭で理解したのではなく「身体で覚えた運動」の代表例だと言えます。

思考活動の負担軽減

この、「やり慣れたことを無意識化する」というのは、実は、日常生活のさまざまなところで普通に行われています。

単純な例では、外出したときに、家に鍵をかけたかどうか思い出せないことがありますが、これなども、鍵をかけるという行為が習慣化して無意識にやっているからです。

毎朝、出勤前にやっているルーティンワークは、そのほとんどが無意識化していて、ネクタイを締める動作なども、経験不足でない限り、「次の手順は~」などといちいち頭で考えなくても手が勝手に動くはずです。

ですから、何か考え事をしながらできることについては、そのほとんどが無意識化した行為だと言って良いでしょう。

人が起きて行動しているときは、意識がはっきりしていて無意識になることなどはないと思われがちですが、すべての行動を意識的にやっていると煩雑すぎて思考回路がパンクしてしまうので、「やり慣れたことは意識や思考の関与をパスして無意識化する機能」が人には備わっています。

考えなくてもできるけれど決して簡単ではない

誰もが無意識的にできる「歩く」という行為ですが、ロボットに「二足歩行」をやらせるまでには、かなりの時間を要したようです。

考えなくてもできることだからといって、単純で簡単な運動だということではないようで、現在に至っても、人間のようにスムーズにさっそうと歩くロボットは見たことがありません。

(もともと、ロボットの足のサイズは身体との比較で人の倍以上あることが多く、歩行中のバランスの保持はそれだけ難しいようです)

工場などで稼働するロボットは、複雑な作業を人間より速く正確にこなすのが当たり前ですが、でも、人間にとってはとても簡単な「歩く」という作業については、まだ人間のレベルに達していないようです。

人は普段、何も考えずに歩いていても、実際の運動としては結構難しいことをやっているわけです。

テニスのプレーは無意識的な動きで構成されている

こうした、「難しいことでもやり慣れてしまえば考えずに実行できる」という運動(=無意識的な運動)でテニスのプレーは構成されています

テニスは毎回違う動きで打つスポーツ

テニスは、飛んでくるボールを打ち返すスポーツなので、打つ前のボールの状態は毎回変わります。

そのためテニスプレイヤーは、飛んでくるボールに対して毎回違う動きで対応しているのです。

でも、自分がそんなことをやっているとハッキリ自覚しているプレイヤーは、あまり多くはないようです。

なぜなら、そうした「ボールに合わせた運動変化」は、プレイヤーの意識的な判断に基づいて実行されるのではなく、「無意識的に」かつ「反射的に」行われるので、「なるほど、確かに自分は毎回違う動きでボールを打っている」などという自覚が生まれにくいのです。

自分が決めたという思い込み

たまにですが、自分の身体の動きはすべて自分の意志の力でコントロールしていると考えている方も居るので、そういう方は、ボレーの時のフェース角度も自分が考えて決めていると言われることがあるのですが、多くの場合、起きたことを事後確認して「自分が考えた」と思い込んでいるだけのようです。

基本的に、人の考えは「言葉」で組み立てられているので、思考のスピードは言葉のスピードを超えることが困難です。

そして、言葉で考えをまとめるスピードには限界があるので、ゼロコンマ数秒以内に飛んでくるボールには間に合いそうもありません。

ですから、ボレー時のフェースコントロールは「飛んでくる打球を目でとらえた瞬間に決定され」、ボールがこちらに到達するまでの「ほんのわずかな間に反射的に実行に移される」ので、思考や判断が入り込む余地はほとんどないわけです。

そうした状況で、無理に思考を割り込ませて「こうしよう」などと考えてしまうと、とたんに、インパクトが不正確になってミスショットになる確率が上がります。

これは、頭で考えることで身体の反射が鈍くなってしまうからです。

ボールに合わせて変化しなければ打球が安定しない

ストロークの場合、位置(高さ)、角度(上昇・下降)、速度、回転(方向と量)などが毎回異なる状態で飛んでくるボールを、一定の場所に安定して打ち返すことができているのであれば、「プレイヤーの運動がボールに合わせて毎回変化している」ということについては疑いの余地がないでしょう。

なぜなら、位置、角度、速度、回転という4つの要素がそれぞれ毎回異なるボールに対して、一定の打ち方で対応すれば、打球の飛んでいく先がバラバラになるのを避けられないからです。

⇒参照:打つ前のボールの状態が返球に与える影響について

ゆっくり考えている時間がない

ではどうして、飛んでくるボールの状態に合わせた運動調整が「無意識的に」行われるのでしょうか。

それは、「ゆっくり考えている時間がない」という「どうしようもない現実」によるものです。

ストロークの場合はボレーより少し時間的な余裕がありますが、それでも、相手が打ったボールをこちらが打ち返すまでに使える時間は、実戦レベルの打ち合いでだいたい1.5秒くらいです。

その短い間に、飛んでくるボールを打ち返せるところまで異動して、スタンスを決めてテイクバックして等々、打つ前に済ませるべきことをすべて完了させておく必要があります。

さらに、飛んできたボールの弾み方が予想外だったりすることもあるので、打つ前のボールの状態が最終的に確認できるのはこちらのコートでの着地後になります。

そのため、ボールが飛んでくる1.5秒の間にではなく、ボールが着地した瞬間に動きを決めるような忙しいタイミングになります。

そして、打ち合いが続く限り、そうした行為を何度も繰り返さなければなりませんが、その間隔は3秒前後と、落ち着いて考えていられる時間はありません。

すべてを把握して対応するには時間が足りない

飛んでくるボールを打ち返すときには、位置、角度、速度、回転という4つの要素それぞれに対して動きを変える必要があるのですが、「ヒザの高さの落下気味の遅いスライス回転のボール」というように、これらの要素は一つのボールに複合的に含まれています。

ですから、位置という一つの要素だけについて「ヒザの高さのボールはこうやって打とう」とか、「肩口のボールはこう」というように考えて打ち方を決めることは可能だとしても、実際の状況は位置だけでなく、角度、速度、回転という他の複数の要素が毎回それぞれ異なるわけです。

なので、それらすべてを把握した上で、そのボールに適した動きを頭で考えて選んでいては、とてもではないですが間に合いそうもありません。

どんな返球をするかによっても動きが変わる

「飛んでくるボールの状態に合わせたスイングをする」ことは、テニスのショットに絶対不可欠なことで、この条件をクリアできないとプレーができません。でも、それだけでは、テニスのショットは成り立ちません。

なぜなら、飛んでくるボールを打ち返す動きは「相手コートのどこにどんな球筋で返球するのか」によって変わらなければならないからです。

一例を挙げれば、ダブルスで相手のサーブをクロスに普通にリターンするのか、ストレートロブを上げるのか、ショートクロスで返すのか等々によって、当然ですが、リターンするプレイヤーの身体の動きやスイングが変わります。

ですから、プレイヤーがボールを打つときに実際にやっているのは、「飛んでくるボールの状態に合う適切な動きを選択しながら、その動きを相手コートのどこにどんな球筋で返球するのかという狙いが実現するように調整する」という非常に複雑な作業なのです。

そのため、「この、ヒザの高さの落下気味の遅いスライス回転のボールを、ショートクロスに打ち込むためには、こんな打ち方で~」などと頭で考えていたら、行動を起こす前に考えをまとめるだけでタイムオーバーになってしまうでしょう。

ということは、打ち合いが安定して続いている場合は、「飛んでくるボールを見るだけで適切な動きが選択され、返球の狙いに応じてその動きが調整されて実行される」という行為が、本人の思考や判断に基づかずに自動的に実行されているわけです。

無意識的な反射運動の確認にはビデオ撮影

「無意識的な反射運動でボールを打っている」ことがどうしても信じられないという方は、自分のプレーを撮影してみると良いでしょう。

撮影された自分の動きが、それまでイメージしていたのと大きく違うようであれば、とりあえず、自分の意志に基づく動きにはなっていないことについては、そこで確認することができるでしょう。

ボールを打っている姿がまるで自分ではないように感じたら、そこには、「無意識的な反射運動」が打球を相手コートに入れるためにいろいろ工夫しながら打っている姿があるわけです。

そのうち方が変だと感じたなら、それは、打球を相手コートに入れるために仕方なくそうなってしまっているので、その変な打ち方を変えるのは、恐らく容易ではないでしょう。

その理由は、仕方なくそうなってしまう根本の原因を見つけないと直らないからです。


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こうした「無意識的な反射運動」=「考えなくても、飛んでくるボールに対応できる能力」は、プレー上はとても便利なのですが、いったいどうすれば身につけられるのでしょうか。
無意識的な運動を獲得するには

向上心のあるプレイヤーほど、自分の打ち方をいろいろ改善しようとして、「ああしよう、こうしよう」という課題を抱えながらプレーしていることが多いのですが、自分の打ち方を簡単に直せると思うのは避けたほうが良いようです。
無意識的な反射運動は簡単には直せない

それでは、一度身に付いた無意識的な動きは後で直すことができないのでしょうか。いいえ、そんなことはありません。決してそんなことはないのですが、ただ、普通に行われている「意識的に直そうとするやり方」ではうまく行きにくいでしょう。
無意識的な反射運動を修正するには

「知らないうちに変わる」という状態を獲得する一つの方法として、意外かもしれませんが、ラケットの選択や調整が有効です。なぜなら、ラケットを持ち替えるとプレイヤーの動きが「知らないうちに変わってしまう」からです。
無意識運動とラケットの関係


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