テニスラケットの寿命について
テニスラケットの
寿命について
【質問】
テニスラケットには賞味期限というか寿命ってあるんでしょうか。
【回答】
私どものようなテニスショップにしてみれば、もし仮に、ラケットに2年程度の賞味期限というものがあって、なおかつ、それがフレームなどに記載してあったら、これほど喜ばしいことはありません。
なぜなら、店で待っていれば、お客様が賞味期限の切れたラケットを買い替えに来てくれるわけですから、想像するだけでもうれしくなってしまいます。
ところが現実は、残念なことに、ラケットに賞味期限というものは存在せず、同じラケットを10年以上使っている方も別段珍しくありません。
しかしながら、確かに使用による性能劣化はあります。
カーボン繊維自体はとても強靱で、素材疲労を考慮しなくても良いくらいなのですが、カーボン繊維は樹脂で固められていますので、その樹脂のほうがボールインパクトによるフレームの変形と復元を繰り返す中で、へたるというか、カーボン繊維を結びつけて固める力が弱まって来るようです。
(最近はナノテクノロジーを応用して、樹脂のほうも改善が進んでいるようですが)
ということで、同じラケットを同時期に2本買って、片方だけ使用して1年経過した段階で打ち比べれば、使用していなかったものがスッキリ弾くのに対して、1年間使用したほうは弾きが鈍く、飛びが悪くなっているのが分かるでしょう。
でも実際には、そんな実験をやってみようという方はほとんど居ませんので、普通は、ヘタリを実感することなく何年も使い続けることになります。
買ってから長い期間が経過しても、使わなければへたることはありませんので、その辺は、食品とは違います。
ボールを打たなければ性能が劣化するということは基本的にありません。
当然、どんな使用状態なのかということも劣化の進行に影響します。
強いインパクトを数多く繰り返したほうが、フレームの大きな変形と戻りが繰り返されるため、ヘタリが進みやすいわけです。
ですから、同じラケットでも、女性が2年使ったものより、インカレクラスの男子学生が一ヶ月間使ったもののほうがヘタッている可能性が高いわけです。
そのため、外見上はキレイでも、ハードヒッターが使用したラケットは、打ってみると腰が抜けているということがあります。
このように、使用による性能の劣化は確かにあるのですが、その進行はおだやかで、ある時急にガクッと変わるということはありません。
ですから、いつまで使うかは、使う人の価値観次第ということになります。
「テニスのラケットの寿命は2年が限度だ」という意見もあり、そういう考え方は、私どもは大好きですが、悲しいことにそういう方ばかりでなく、ヒビが入ったり、折れたりしなければ10年使っても問題ない、と考えている方のほうが、現実にはかなり多いかもしれません。
ある時点で急に性能が変化してくれれば、私どもも、それが賞味期限だ言いやすいのですが、残念ながら劣化は徐々に進行するため、先ほどのような新品との比較をやらない限り、長年使っていても気付きにくいと言えます。
大昔のウッドラケットやカーボン製ラケットの初期のタイプは、強度不足のために、使っているうちに折れてしまうのが当たり前でしたが、現在では、通常の使用で折れることは滅多にないくらい強度が向上しており、ということは、悲しいことに、性能劣化の進行速度も遅くなっているわけです。
張り替える際に、フレームに負担がかかるのは間違いありませんが、何回張り替えたからもうダメということはないでしょう。
でも、ラケットに賞味期限があったら、ホントに良いのになぁ—–。
ヘタったラケットの使用感
先日、テニス仲間のラケットを打ってみて、久しぶりに「へタッたラケット」の打球感を思い出しました。
10年ほど使ったプリンスのNXグラファイトOSですが、使っている本人も、さすがに、打っている割に打球が行っていないことを実感しているようで、ハードヒットしようとすると打球が押さえ込めずにスッポ抜けてしまうというような状態でした。
使用感は、端的に言えば「受け取って終わり」という感じで、ボールから手応えを受け取っても、それが反発力に変わることなく、吸収するだけで終わってしまうので、迫力のない飛びになります。
新品のラケットの弾きが「パーン」というのであれば、ヘタッたラケットのそれは「バコッ」という感じです。
衝撃の吸収は良いのですが、ボールの飛びに鋭さがなく、飛んでくる打球が強くても弱くても、打ち返すときは同じような勢いになってしまうような感じです。
「しっかり打ってもボールが行かない」というのが、ヘタッたラケットの症状です。
長年使い慣れたラケットで、最近は、いくら打っても結構簡単に打ち返されてしまうというような「報われない感じ」がしてきたら、「ラケットのせいかな?」と疑ってみても良いでしょう。
中で折れている?
使い込んだラケットについてのご質問でよくあるのが、「このラケット、中で折れているようなんですが」というものです。
外見上でヒビ等は見当たらないのに、打球時に変なビビリ音がしたり、飛びが悪くなったりというようなときに、そう思われることがるようですが、テニスラケットが中で折れるということは現実的に起こりえません。
カーボン製のテニスラケットは基本的にパイプ構造であり、強度を支えているのは外側のカーボンパイプの部分で、フレームパイプの内部には強度を支える構造物はほとんどありません。
ボール以外のものを打ったときなどに発生する外部衝撃によってカーボンのパイプに亀裂が入ったりすると、その亀裂はすぐに表面の塗装部分まで達しますので、塗装面に変化がない状態で、その下の繊維が断裂しているというケースはあまり考えなくても良いでしょう。
(発見しにくい微妙なヒビというケースはあります)
インパクト時のビビリ音は、ストリング面でストリングとグロメットが微妙に触れて発生したり、グリップ部分でエンドキャップのガタつき等で発生したりするケースがほとんどですので、その部分をチェックされたほうが解決につながりやすいでしょう。