テニスガットの正しい知識 応用編

ガットの知識—応用編2

素材が良ければ味付けはシンプルに


フレームに張るガットの種類と張り上げの硬さ(=ストリング・セッティング)については、「ラケットの性能をより生かすにはどうすれば良いか」という方向で考えている方が少くないと思われます。
車に高価なオプションパーツを取り付けたり、アイスクリームにトッピングを載せたりすると、性能が向上したり、美味しさが増したりするわけですが、ラケットもそれと同じように考えて、「良いストリング」を張ればラケットの性能が向上すると考えてしまうのかもしれません。
ですが、その考えはちょっと危険です。
料理に例えると分かりやすいかも知れませんが、「素材が良ければ味付けはシンプルで良い」とお考えいただいたほうが良いかもしれません。
つまり、フレームの特性がプレイヤー本人に合っている場合は、味付け、つまり、ストリング・セッティングはあまりこらずに標準的なものが良いということです。

ストリング・セッティングは不満解消の手段

仮に、プレーがうまく行かなくてラケットに何か不満を感じる場合には、ストリング・セッティングで工夫するというのはアリです。
つまり、不満の解消のためにセッティングを変えるのはアリなのですが、そうではなく、特に不満はないのに、「ストリング・セッティングを変えれば、もっと良くなるのではないか」と考えるのはちょっと危険です。
プラスアルファを探すのではなく、マイナス点を解消させる方向で考えたほうが、ストリング・セッティングを間違えて損をすることが避けられるでしょう。

ストリングの特性でラケットの性能が変質する!

インパクトの感触がマイルドなもの、ホールド性が高いもの、弾きの鋭いもの、良く飛ぶもの、飛びを抑えたもの等々、ストリングの特性はいろいろありますが、そうした特徴的なフィーリングのアイテムを使うと、それによってラケットの性能が変わります。
変えたことで何かが良くなるかもしれませんが、その良くなったのとは別のところでデメリットが発生する危険もあります。
ですから、変える前に合っていたラケットが、ストリング・セッティングを変えることで勝ちにくくなってしまうということもあるわけです。
ですから、高いガットを張ればラケットの性能が良くなるとは限りません。

「感触」で選ぶケースが多い!

さらに、ほとんどのケースで、ストリングの選択基準は「感触」なのですが、これもかなり問題なのです。
ボールを打ったときの「感触」は、プレイヤー自身がわざわざ感じ取ろうと努力しなくても、手を通じてダイレクトに感じ取れる情報ですので、それがストリングを選ぶときの判断基準になりやすいのです。
でも、ここで注意していただきたいのは「打ったときにプレイヤーがどう感じるかは戦力には全く影響しない」ということです。
打球感が気持ち良くても戦力がアップするとは限らないわけです。
さらに、特徴的な感触のほうが違いがわかりやすいので、特徴的なものを選ぶようになる可能性が高いのです。
その結果、ストリングの特性の影響を強く受けて、ラケットの基本性能が大きく変質してしまう可能性も高くなるわけです。

戦力アップにつながるかどうかがキーポイント!

テニスを単なるフィットネスとしてではなく、勝とうとしてプレーしているのであれば、「戦力アップにつながるかどうか」という基準でストリング・セッティングを決める必要があります。
そして、そための最も簡単なチェック方法は「相手に聞く」というものです。
打ったときに自分がどう感じるかではなく、「こちらの打球が行っているかどうか」を相手に尋ねるわけです。
相手にプレッシャーを与えられる打球が出ているかどうかということです。
これは、プロ選手などもやっていますが、自分が気持ち良く打てているかどうかより、攻撃力のある打球が出ているかどうかのほうがずっと大切だということを彼らは知っているからです。

ホールド性が好まれる傾向

日本人プレイヤーの傾向として、ホールド性の高いマイルドな感触のストリングを好む面があるようです。
ホールド性の高いマイルドな感触のストリングは価格が高めなので、価格の分だけ何か良くなるのではと考えられがちですが、プレー上、マイナスの影響が出る可能性もあります。
ホールド感とは、インパクトでストリング面にボールが「ググッ」と載っている感じのことですが、これが感じられると、ボールを自分でしっかりコントロールしている「安心感」のようなものが得られるようです。
でも、「ググッ」と載っているということは、言葉を換えれば、ボールがアッサリ出て行っていないわけで、もしかすると、「ググッ」と載っている間に反発力が減衰して打球が思ったほど元気良く飛んでいないかもしれません。
いずれにしても、打球フィーリングの好き嫌いでストリング・セッティングを決めていると、意外にも、知らないうちにプレーパフォーマンスが良くない状態に陥ってしまう危険があります。

硬すぎるケースが多い!

最近の傾向として、ストリングマシンの性能向上にともなって、張り上がりが硬すぎるケースが増えているようです。
フレームに記載してある適正テンション範囲は数十年前からあまり変わっていませんが、その間のストリングマシンの性能向上によって、同じテンションで張っても、張り上がりが以前より格段に硬くなりやすいのです。
マシンの性能が変わっても、実際に適切な硬さに張り上げられていれば問題はないのですが、ここに深刻な問題があります。
それは、多くのケースで張り上がり時のストリング面の硬さを計測していないという問題です。
料理を作って味見をしないのと同じで、これではどんな仕上がりになったのかが分かりません。
何ポンドで張ったというのは、あくまで使用したマシンの設定値であって、それで結果的に、ストリング面がどういう硬さに仕上がったか(面圧)については、専用の面圧測定機で測らないと分かりません。
その測定機を備えていない場合が多いのですが、そういう場合は張りっぱなしということです。
そうしたことから、フレームに書いてある適正テンションの数値を鵜呑みにして張ったら、硬くなりすぎてしまったというケースが多いのですが、レシピどおりの調味料を使って料理をしたら激辛に仕上がってしまったというのと同じです。
そういう場合も、できた料理の味見をすれば激辛に気づくわけですが、味見をしてないため、テニスエルボーになって初めて気が付いたという事例が結構あります。
テニスのプレーで使うのは、ストリングマシンではなくテニスラケットですので、張る時のマシンの設定値(テンション)がいくつであったかは、プレーに関係ありません。
ストリング面がどの程度の硬さに張り上がったのかが大切なのですが、その部分が無視されているケースが多いのが現状の大きな問題だと考えます。
【参照⇒「不適切なストリング・セッティングの理由」】
【参照⇒「テニスワンのガット張り」】

硬さの決め方

ストリングの硬さについては、硬いほうが良いのか、柔らかいほうが良いのかというような議論が多いようです。
例えば、スピンをかけるには、ストリングは硬いほうが良いのか柔らかいほうが良いのかとか、ボレーが打ちやすいのはどっちかとかの議論ですが、答えはいたってシンプルで、そのどちらでもなく「ちょうど良いのが一番」ということです。
その「ちょうど良い硬さ」を探すにはどうすればいいでしょうか。
それには、同じフレームで張上の硬さが違うものが何本か有れば簡単にチェックできます。
打ち比べて、打球感が一番希薄なものが、その日に合っているセッティングです。
これはショートラリーでも比べられますが、通常のストロークであれば、打球音はするけれども打球感が軽いと感じられるものがその日のベストセッティングです。
ラケットは、プレイヤーのパワーをボールに伝える道具ですが、ボールと実際にコンタクトするのはストリングですので、ストリング・セッティングはとても重要です。
そして、プレイヤーの運動がスムーズにボールに伝わった場合、プレイヤー側のパワーは行ったきりになって戻ってきません。
一方通行で、ラケット側には何も残らないわけです。つまり、うまく伝わると手応えは小さくなるのです。
ところが、プレイヤーの運動がスムーズにボールに伝わらなかった場合、何かがそこに残ってしまいます。その何かとは「打球の衝撃=手応え」です。
プレイヤーのパワーをボールに全部伝えきれず、ムダになってしまったものが「打球感」なのです。
しっかりした手応えがあった時に良いショットを打ったと誤解しているケースも多いようですが、インパクトの手応えは単なる「伝達ロス」です。手応えが大きければ大きいほど、パワーがうまく伝わらずに逃げてしまったということです。
ですから、プレイヤーのパワーが無駄なく打球に伝わるセッティングは打球衝撃が一番小さいものなのです。
フィットするセッティングより硬すぎる場合はゴツンという鋭角的な感覚が残り、柔らかすぎる場合はズシンという重さを感じることが多いようです。
その中間で「何も感じないのがベスト」ということです。

合うセッティングは日替わり!

多くのプレイヤーは、自分に合ったストリング・セッティングを一つに絞り込もうと考えて、最高の状態を探そうとするようです。
そして、良い感じが見つかると、そのセッティングで一年中通そうとするわけです。
その結果、ある時期は調子が良くても、別な時期は調子が良くないということが起こりやすくなります。
その仕組みは以下のようなことです。
同じラケット、同じストリング・セッティングでも、ラケットのパフォーマンスは日によって変化します。
思いどおりに飛んだり、思いどおりには飛ばなかったりするわけですが、そういう場合、普通はプレイヤーの調子の変化だと理解されることが多いようです。
でも、プレー環境が変化すると、その影響を受けてボールの飛びは日によって変わります。
日によって良く飛んだり飛ばなかったりするわけです。
私どものやった実験では、20℃くらいの温度変化で5~6mの飛びの違いが出ることが把握されています。
季節の変わり目では、前日との温度差が10℃位になることも珍しくありませんが、それによって、一日で3mくらい飛びが変わることになります。
その他、コートサーフェスの違いでもボールの飛びが変わります。
速いコートほど良く飛んで、遅いコートほど飛ばないわけです。
ですから、高原ハードコートでプレーすると、アウトするのが当たり前のような状態になります。
気温が高いことと気圧が低いことに加えて飛びの出やすいコートサーフェスなので、飛びやすい条件が三拍子揃ってしまうからです。
逆に、冬のナイターでオムニコートでプレーをしたら、飛ばない要素が重なるので、力んで打っても飛ばないわけです。
テニスエルボーには、秋口に始まって冬に間は持ち越して、春になったら治るという発症傾向がありますが、低温時にボールの飛びが悪くなることが影響している思われます。
プレー環境の変化でボールが飛んだり飛ばなかったりすることを知っていれば、「今日の自分はどうしたんだ」と自分を責めることが少なくなるでしょう。
ある時期、ストロークがうまく打てなくなるのは、自分の調子のせいではなく、気温変化に合わせたセッティング調整ができていないせいだということも分かるでしょう。
自分に合うストリング・セッティングを一つに絞り込もうとせず、最高の状態は非常に流動的なものだとお考えください。
そして、その日その日の自分のプレーに合ったストリング・セッティングを探そうと考えていると、調子の波が少なくなるのがわかると思います。

切れるまで張り替えない!?

半年以上使ってもガットが切れない方の中で、切れるまでそのまま使い続けるという方も結構多いようです。
ガットが切れるまで張り替えないという方の場合、言い換えれば、切れるまで張り替えなくても特に不満を感じないということで、それはつまり、いつものストリング・セッティングが良い状態から大きく外れていることを示しています。
良い状態に近いストリング・セッティングであれば、日によって打ちやすかったり打ちにくかったりという違いを感じてしまうので、打ちにくくなってきたときにガマンできずに張り替えてしまうのですが、良い状態から大きく外れているストリング・セッティングでは、いつも変わらず打ちにくいので不満を感じることが少ないようです。

種類よりも硬さが大事!

テニスワンではラケットドックというラケットフィッティングイベントを常時開催しており、そこで数多くのプレイヤーのストリング・セッティングをチェックしてきました。
その結果、使いにくいラケットの原因の多くが「張上の硬さ」にあるということがわかっています。
「ストリング・セッティング」とは、「どんなガットをどれくらいの硬さに張り上げるか」ということですが、多くの方は「どんなガットを」については強い興味を持っているのに比べて、「どれくらいの硬さに」のほうにはあまり興味を持っていないように見受けられます。
張り替えるたびに種類の違ういろいろなガットを試すことはあっても、張上の硬さはいつも同じという方が少なくないようです。
でも、プレイヤーの戦力を左右するのは、基本的に種類よりも硬さです。
なぜなら、張り上げの硬ささえ適切であれば、どんな種類のガットを選んででも、感覚的な違いはあるにせよ、それなりに戦うことはできるのですが、張り上げの硬さが不適切な場合は、どんなガットを選んでもショットが不安定になるからです。
先述したように、プレーにフィットする硬さは日替わりで変化するため、それを見つけ出すのは簡単ではありません。
あるとき「最高!」と感じたストリング・セッティングが、環境が変われば「全然ダメ!」という状態になってしまうことがあるからです。
でも、「これで良いんだ」という思い込みを捨てて、常に「今はどれくらいの硬さが良いのかな」という疑問を持ち続けることで、合わないストリング・セッティングによるプレー上の損失を防ぐことができます。
とりあえず、季節によって張りの硬さを変える必要性を感じていない場合は、現在の硬さが適切な状態から大きく外れている可能性が高いと言えるでしょう。

同時に打ち比べるしか方法はない!?

自分のプレーにフィットするストリング・セッティングを見つけ出すには、同じラケットを2本以上用意して同時に打ち比べるしか方法がありません。
1本のラケットを張り替えながら比べても、過去の記憶との比較はあいまいであり、なおかつ、気温や相手などのプレー環境が変化すれば比較になりません。
同時に打ち比べなければわからないということは、スイングウェイトの数値を揃えた同じフレームが2本以上なければ、自分にフィットするストリング・セッティングは見つけられないということです。
そして、打ち比べる際には、打ったときの自分の感覚情報は無視して、ボールを打つときの身体の負担が減って打球の勢いが上がるかどうかを観察することが必要です。
一番簡単な判断は、相手の返球ミスが増えるストリング・セッティングがベストだということです。
また、多くの場合、「打つときの身体の負担が減る」のと「打球の勢いが増す」というのはワンセットで出現するので、「打つときの身体の負担」と「打球の勢い」のどちらか一方にだけ注目していれば、良い状態を見つけ出すことができるでしょう。
特にペースダウンしたわけではなく、同じペースで打ち合っているのに、ラケットを持ち替えて打つときの負担が減った場合は、打球への運動の伝わりが良くなったということなので、打球の勢いは上がります。
逆に、ラケットを持ち替えて打つときの負担が増える場合は、打球の勢いは上がらず、また、同じ運動を正確に繰り返すことが難しくなるのでミスも増えます。
「打つときの負担は減ったけれど打球の勢いも減った」というケースや、「打つときの負担は増したけれど打球の勢いも増した」というケースは意外に少ないので、良い状態を見つけるのはそれほど難しくないでしょう。
ラケットが1本しかないと打ち比べられないので、ストリング・セッティングが合うか合わないかが分かりません。
同じラケットが2本以上有って、硬さが少し変えてあれば、日によって合うほうが変わることが簡単に分かります。
それによって、調子が悪い時に、それが自分のせいなのか、ラケットのストリング・セッティングのせいなのかが区別できて、余計な努力をしなくて済むようになります。
複数本のラケットは比べるためにあるのです。

フレームのほうを疑うべき!?

ストリングに詳しい方は、ややもすると、ストリング・セッティング次第で何でもできるかのように思ってしまう傾向があるかもしれません。
確かに、ストリング・セッティングがダメなだけでラケットの性能が台無しになるのは間違いありませんが、だからと言って、ストリング・セッティングが適切ならダメなラケットが快適に使えるようになるということはありません。
料理に例えると、高級素材でも調理に失敗すれば美味しくないのですが、かと言って、ダメな素材を調理方法だけで美味しく仕上げるのは無理ということです。
素材としての「フレームの特性」と、調理方法としての「ストリング・セッティング」は、快適なラケットを構成する要素として両方とも大切なのですが、片方だけではもう片方の不備をカバーすることはできないわけです。
なので、不適切なフレームをベースにしてストリング・セッティングをいろいろ工夫しても、快適な状態を見つけることはできないでしょう。
ですから、ストリングをあれこれ工夫しても良い状態にならない場合は、自分とラケットの相性を疑ってみるのも一つの方法です。
でも逆に、自分に合うラケットを見つけるためにいろいろ試打しても、それらのラケットのストリング・セッティングが適切でなかったら、どんなにたくさん打っても快適に打てるラケットには出会えないということもあるわけです。
適切なフレームを選ぶことと、適切なストリング・セッティングを施すことは、両方同時に実現しなければならないわけですが、これがラケット選びの難しさの根本原因だと言えるでしょう。
だとしても、自分に合うラケットを手に入れるのが最優先であり、それをベースにして、より快適に打てるストリング・セッティングを探すというのが現実的な道筋であることは間違いないでしょう。

知らないと損をする
ガットについての情報

ガットとガット張りについて誤解しやすいポイントを集めました

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打ち比べる
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と適切な硬さ
好みで決めると
外れる!
条件変化に
対応した
適切な硬さ
推奨テンションが
適切ではない
不適切な硬さが
もたらす弊害
スピンのかかる
セッティング
テンション以外
で張上の硬さが
変わる
適切な硬さを
簡単に見つけるには
テニスワンの
ガット張りについて
ほとんどのプレイヤーは
ラケットで損をしている!
・・・というのが10,000名以上ラケットフィッティングで得られた結論で、その原因は、自分に合うラケットを手に入れるには「モデルの特性がプレイヤーに合っている」+「フレームのスイングウェイトが適切」+「ガットの種類と硬さが適切」という三つの条件を同時にクリアしなければならないので、そういうラケットに偶然出会える可能がとても低いことにあるようです。合わないラケットはミスを増加させてショットの勢いを無くすだけでなく、プレイヤーの動きを悪くして故障の原因にもなります。

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