適切な硬さを見つけるコツ/その2

テニスのガット張りの
適切な硬さを見つけるコツ/その2

ガット張りの適切な硬さの見つけ方/その1」で、適切な硬さを見つけるための判断基準は「インパクトの手応えが一番軽くなるものを選べば良い」と提案させていただきましたが、以下はその付加説明です。

しっかり打ったときの感じが好き!

強い手応えが好きなプレイヤーが意外に多い

残念なことに、テニスプレイヤーの多くは、「打った」という強い手応えがあるのを好んでいるケースが意外に多いのです。
手応えが軽くなるのではなく、逆に、インパクトで「しっかりした打ち応え」があったときのほうが、「良いショットを打てた」と感じるプレイヤーが現実的にはとても多いようです。

そうなってしまう経緯は、以下のようなものではないかと推測されます。

手応えが「力み」の元

ストリングが適切な硬さに張り上がっていないラケットで打つと、打球にうまくパワーが伝達できないので衝撃が発生し、それがプレイヤー側に戻ってきます。

人の身体は、外部から何らかの衝撃が加わることが予想されると、それに対処するために自然に力が入ってしまいます。
打球の衝撃についても同様で、インパクトで強い衝撃が予想されると、ラケットを持つ手に自然に力が入ります
強い手応えが予想されるときにラケットを柔らかく持っていたら、ブレたり弾かれたりするので、グリップをしっかり握りしめて腕全体に力を入れて衝撃に耐えようとするわけです。

そしてこれは、意識的な行為というより「身体の自然な反射」といって良いでしょう。「思わず力が入ってしまう」という状態なので、自分の意志で治そうとしても、「力み」が取れる可能性は低いといえます。
インパクトで手応えのあるラケットを使っていると、知らないうちに力が入ってしまうのです。

力むためには「手応え」が不可欠

こうした形でいつも力を入れて打っていると、力を入れることが習慣化して「力を入れて打つ」というスイングイメージが固定化していきます。
入れる力の強弱で打球の強さを調節しようというスイング感覚になってしまうわけです。

そして、力を入れて打つようになると、今度はそれに見合う「手応え」が必要になります。

力を入れるためには対象となる相手が必要で、空気のような手応えのないものに対して力を入れることはできません。そのため、何か抵抗となる対象物が必要になるのです。

力を入れて打つ際の対象物はボールですので、ボールの手応えがないと力を入れることができません。
抵抗が小さいと強い力を入れることができないので、強い力を入れようとする際には、それに見合う強い抵抗=大きな打球衝撃が必要になるわけです。わけです。

打球衝撃があるから力を入れるわけですが、それが習慣化すると、今度は、力を入れるために打球の手応えが必要になるので、この二つは切っても切れない関係になってしまいます。「手応え」と「力み」はワンセットなのです。

二つを同時に変えないと抜け出せない

そのため、「手応えを感じながら力を入れて打つ」という状態から抜け出すためには、この二つを同時にリセットすることが必要で、片方だけ変えても効果が上がりません。

プレイヤー側だけがスイングイメージを変えて力を入れて打つのをやめようとしても、インパクトで強い手応えのあるラケットを使っている限り、打つときに自然に力が入ってしまうので、力んだ状態からは抜け出しにくいわけです。

その反対で、ラケットのストリング・セッティングだけを適切な状態にして手応えを軽くした場合は、手応えが弱いと強い力を入れられないので、そうした打ち応えのない状態に対してプレイヤーが不満を感じてしまうでしょう。「もの足りない」とか「打った感じがしない」とかの印象になってしまうのです。

ですから、力を入れて打とうとするプレイヤーは、打球衝撃のあるストリング・セッティングを自ら望んで維持しようとするわけです。

その結果、「手応えがある」⇒「力を入れて打つ」⇒「手応えのある状態を好む」⇒「力を入れて打つ」という、出口のない繰り返しに入ってしまうようです。

運動効率の向上と故障の防止

最も効率良くボールが飛ぶ硬さを見つける

打球衝撃が一番小さい状態を探す」というのは、言葉を換えれば、「最も効率良くボールが飛ぶ硬さを見つける」ということです。

効率が良い」というのは、「できるだけ小さい運動負荷で、できるだけ強い打球が生まれる状態」ということで、「運動効率の良い状態」と言い換えることができます。

テニスのプレーは基本的に長時間に及ぶため、強い運動をしているとすぐにバテてしまいます。マラソンを短距離走のように走ったら体力が続かないわけです。
ただし、いくら体力を温存してもこちらの打球が弱ければ、簡単に打ち込まれて負けてしまうので、それでは元も子もありません。強い運動をせずに強い打球が欲しいわけです。

パワー出力をセーブすること」と「打球のパワーを上げること」を両方同時に実現しないと、実質的な戦力アップにはなりません。
運動をセーブするだけでは勝てませんので、運動効率を向上させて小さな運動負荷で強い打球を実現させる必要がありますが、そのためには、「最も効率良くボールが飛ぶ硬さを見つける」ことが必要です。

飛ばないセッティングは運動効率を下げる

「最も効率良くボールが飛ぶ硬さを見つける」という話を聞くと、「そんな状態ではアウトが増えるじゃないか」と言われそうですが、「ストリングの張りが硬いとアウトが増える!? 」のノートで解説したように、実際のプレーでは、飛びの出にくいストリング・セッティングのほうが、逆にアウトが増える傾向があります。

さらに、飛びを抑えようという狙いどおりに打球がコートに入ったとしても、その打球は飛びが抑えられてコートに入っているわけで、言い換えれば、「飛びが抑えられて=飛ばなくなって=飛んでいく勢いが無くなって」コートに入っている状態です。
そんな打球では、どう考えても、相手にプレッシャーを与えることはできそうもありません。

ラケットの飛びの悪さに頼ってアウトを防いでいる状態より、勢い良く飛んで行ってしまう打球を振り抜いて押さえ込むことでコートに入れている状態のほうが、破壊力のある打球になるのは間違いありません。

ラケットの性能やストリング・セッティングによって、飛びを抑えて打球をコートに入れようとする取り組みでは、運動が強くなるだけで打球の勢いは上がりにくいので、さらに強い運動で打つようになるケースが少なくありません。
力を入れている割に打球の威力が上がらないと、運動がどんどんエスカレートしてしまうのです。

ですから、飛びを抑えたストリング・セッティングのラケットで「力入れて強く打つ」というプレー状態に入ってしまうと、運動効率が低下して、疲れるばかりで威力のない打球を打ち続ける状態に陥りやすいのです。

故障防止のためにも手応えの軽さが必要

テニスは利き腕を酷使するスポーツですので、テニスエルボー等の故障の話題にはこと欠かないのですが、「力を入れて打つ」というスイングイメージが、そうした故障の危険性を増大させる原因になっているのは間違いないでしょう。

力を入れて打つためには、それに見合う手応えが必要なので、手応えがある状態を好んでしまうのですが、それはまるで、自ら故障の「種」を集めて育てているようなものです。

テニスエルボーの原因になるのは「打球衝撃によるダメージの蓄積」ですので、「打球衝撃=手応え」を好んで感じ取ろうとするのは、ほとんど自傷行為(自分で自分を傷つける行為)といってもいいでしょう。

打った感じが希薄な状態を手に入れることは、運動効率の向上に必要なのですが、故障を防いで快適にプレーできる状態を維持するためにも大切なのです。

「適切な硬さ」は流動的

プレー条件によって微妙に変化する

いろいろ試行錯誤を繰り返して、最終的に「軽い手応えのストリング・セッティング」を手に入れたときに、ありがちな誤解は、それが万全だと思い込んでしまうことです。

というのも、「適切な硬さ」は絶対的なものではないのです。
苦労して見つけ出した「適切な硬さ」であっても、それは、その時に適切だということで、いつでも変わらずに適切なわけではないということです。

ボールの飛びは、気温、気圧、コートサーフェース、プレイヤーの体調等々、プレー条件の影響を強く受けます。
あるときには「最も効率良くボールが飛ぶ硬さ」であっても、別なときには、そうではなくなっている可能性があるのです。

疲労度や体調によって、同じセッティングでも手応えを感じたり感じなかったり、ということもあります。

複数のセッティングが必要

トッププロの場合、試合会場にたくさんのラケットを持ち込みますが、あれは、全てがストリングが切れたときの予備ということではありません。
セッティングを少しずらしたものを用意することで、その日のプレーにピッタリ合ったものを選ぼうとするわけで、試合の経過による疲労なども考慮して、その時その時でベストなものを選ぶための準備です。

トッププロの場合は、張り上げたストリングを何試合も使うことはなく、一日の試合だけのために全てを張り替えるのですが、その日の試合のことだけを考えて張り上げる際にも、複数のパターンのセッティングを用意するということは、それだけバリエーションが必要だということです。
用意したものでフィットしない場合は、試合中に張り替えることもあります。

普通のプレイヤーは張り上げたストリングを何ヶ月も使いますので、日々のプレー条件の変化を考えれば、もっとたくさんのバリエーションが必要だとか考えられます。

プレー条件は日替わりで変化しますし、一日のうちでも微妙に変わるので、快適なプレーを目指すのであれば、ワンパターンのセッティングでは対応できません。
プロでなくても、複数のセッティングが必要になるのです。

プロより練習量の少ない一般プレイヤーの場合は、合わないストリング・セッティングの影響を克服する対応力が、体力面も含めてプロより低いと考えられますので、より弊害が出やすいと言えるでしょう。
ただ、残念なことに、合わないストリング・セッティングの影響で戦力がダウンしても、なかなかそれに気づきにくいのが実情です。

セッティングが合っていなければ環境の影響を受けない

打球衝撃の強い、合わないセッティングのラケットを使っていると、環境変化の影響はあまり受けないといって良いでしょう。
もともと打球衝撃が強い場合は、気温が高かろうが低かろうが、同じように打球衝撃は強いので、パフォーマンスの違いは感じにくいと言えます。春夏秋冬、いつも同じ硬さで張っているというのは、こうしたケースだと思われます。

手応えなくスルッと振り抜けたときに、相手が打球の勢いに押されてミスしたりする「良い状態」を体験していると、その状態を維持するために、ストリング・セッティングに注意を払うのですが、ガツンガツンと打っている状態を良しとしていると、ストリング・セッティングにはあまり気を使わなくなるようです。

一時期的な不調の原因は

一時は調子よく打てていたのに、ある時期から急にコントロールが定まらなくなるということがよくありますが、これは、季節の移り変わりによる気温の変化に、ストリング・セッティングを合わせなかったことが原因であることが少なくありません。
コントロールが定まらなくなるのと同時に、打球衝撃が少し大きくなったと感じたら、まさにそういうことです。

こういう場合、ストリングが劣化したのが原因だと考えて張り直す方も居ますが、確かに、ストリングに原因を求めるのは良いのですが、以前と同じ状態に張り替えるだけでは問題は解決しません。
プレー条件が変化したら、それに合わせて張りの硬さも変えないと、一時の調子の良さを取り戻せません。元に戻すだけではダメなのです。

ボールの飛びは気温変化の影響を受けるので、平均気温が10℃くらい変化した場合は、1~2ポンド程度の上げ下げを検討されてはいかがでしょうか。暑いときは硬め、寒いときは柔らかめが基本です。

この場合も、一時的に調子が良い時期があるから、それより悪くなったことが分かるのですが、ストリング・セッティングが最初から外れている場合はフィットしている良い状態がないので、セッティングを変える理由が見つからないわけです。

硬すぎるケースが多い

私どもはこれまで、数千名のプレイヤーのラケットをチェックしてきましたが、張上の硬さについては、柔らかすぎるケースより硬すぎるケースのほうが多いようです。

これは、ストリングマシンの性能向上の影響で、フレームの適正表記からすると低いと感じられる張力でも、張り上がりが硬めになる可能性が高いことが原因だと思われます。
つまり、オーダーした側が硬く張ろうと思っていないのに、硬い張り上がりになっているケースが多いわけです。

まとめ

チャンスボールを打つときについ力んでしまうという方や、入れる力の強弱で打球をコントロールしようとするイメージを持っている方は、ストリングの張りの硬さに問題があるのではないかと一度は疑ってみる必要がありそうです。

繰り返しになりますが、張力の数値に先入観を持つことなく、結果重視で打球衝撃の少ない快適な硬さを探してください。

ストリング・セッティングを常に適切な状態に保つことができれば、いつも気になっているプレー上の問題が減って練習課題が整理されるかもしれません。

Click!⇒テニスのガット張りの理想はズバリ「打球感を無くすこと」
ガット張りの理想は「打球感を無くすこと」です。「打球衝撃が最小限になるセッティング」が実現すれば、インパクトでヘッドが走る状態になって「伸びて沈む打球」が手に入ります。ガット張りは戦力を左右する大切な要素であり、打球の伸びが勝敗に直結します…

Click!⇒テニスワンのガット張りについて
テニスワンは、快適にプレーできるガット張りの硬さの範囲を10,000回以上の実証実験によって把握してきました。故障の危険のある「推奨テンション」の呪縛から早く逃れて、「伸びて沈む打球」を手に入れるために快適に振り抜ける硬さを目指してください…

知らないと損
ガットについての情報

ガット張りについての40件以上の記事が以下の4つのジャンルに分類されています。

Click!⇒ガット張りで損をする
実際にボールを打つのはガットで、フレームはガットのアクションを受け取るだけの存在なので、ラケットのパフォーマンスの主役はガットです。なので、ガット張りを軽視すると、気づかないうちにプレー上で損をすることになります。このコーナーでは、そうした不利益の具体例を紹介しています。

Click!⇒ガットの種類の選び方
テニスガットについての記事を集めたコーナーです。ガットの基本知識や素材や太さの選び方などの解説と、スピンのかけやすさや打球フィーリングについての記事を紹介しています。ガットについては小さな誤解で大きな損をすることがあるので正しい情報を収集してください。

Click!⇒ガット張りの硬さについて
ガット張りの硬さについてのアドバイスを集めたコーナー。ガット張りについては未開拓の荒野のような状態で、多くのプレイヤーがいまだに「推奨テンションの呪縛」にとらわれています。そのため「快適なプレー」という目的地にたどり着くためのルートを見つけるのは容易ではありません。正しい情報を得て迷路から抜け出してください。

Click!⇒ガットについてさらに詳しく!
ガットについてもっと詳しく知りたい方のための記事を集めたコーナーです。適切な硬さを見つけるための情報と不適切な張上の弊害等についての記事があります。「好きな打球感のセッティング」というワナにハマると戦力低下という迷路から抜け出せなくなります。

◆ガット張りを工夫しても「適切なガット張り」は見つからない
ガット張りについての関心が高い方には残念なことですが、でもこれは、まぎれも無い事実です。
その事実とは、「ガット張りだけでは適切なガット張りを見つけられない」ということで、ガット張りについてどんなに深掘りしても、それだけでは快適なセッティングを見つけることはできません。
なぜなら、ガットだけではボールを打つことができないからです。
ガットはフレームに張らないと使えませんが、そのフレームがプレイヤーに合っていないと、どんなにガット張りを工夫しても快適に打てる状態にはなりません。
ですから、快適に打てるセッティングを見つけるには、その前に「自分に合うラケット」を手に入れることが必要なのです。
でも、この話はもっと複雑で、ガットだけではボールを打てないのですが、同じ理由で、フレームだけでもボールは打てないので、自分に合うラケットを手に入れるには、適切なガット張りがされているラケットを試打することが必要なのです。
なぜなら、ガット張りが不適切なラケットをいくら試打しても良い状態にはならないので、時間のムダになってしまうからです。
テニスワンのラケットドックには適切なガット張りが施されているラケットが用意されているので、プレーが良くなるラケットが見つかります。Click!↓

GUT LIVEなんて必要ない![広告]
ガットの動きが悪いせいで起こるネットやアウトを、全部自分のせいだと思いたい人には、GUT LIVEは必要ありません。
◇ボールが面からこぼれてネット
ガットが動かないと「食い付き感」が生まれないので、インパクトでボールをつかまえられずにポロッとこぼれてネットすることが多くなります。そう、あの惜しいネットは食いつかないガットのせいで、自分のせいではなかったかもしれないのです。
◇スピンで押さえ込めずに浮いてアウト
さらに、インパクトで動いたガットが戻るときに順回転がかかるので、ガットが戻らないと回転が安定せずスッポ抜けのアウトが出やすくなります。逆に、確実に回転がかかればショートクロスやスピンロブなどが打ちやすくなります。
◇打球の深さがバラバラ
ガットの動きが安定せずに、ボールインパクトで動いたり動かなかったり、戻ったり戻らなかったりすれば、フェースから打ち出される打球の角度が毎回変わるので、その影響で打ショットの深さが不安定になります。

自分のせいではないことで損をしたくないと思ったらこちら!↓Click!

発売以来10000個以上売れています。
リピーター増加中!

関連記事一覧