打球感のワナから脱出!
テニスラケットの
「打球感」のワナから抜け出そう!
テニスラケットを選ぶ際に重要な判断材料になることが多い「打球感」ですが、そもそも、「打球感」とはどういうものなのかを知らないと、自分に合わないラケットをわざわざ選んでしまうことになるかもしれません。
ボールとの衝突で生まれる「打球感」
素振りでは「打球感」は生まれません。
「打球感」は、ボールとラケットがぶつかることで生まれます。
飛んできた「ボール」と、プレイヤーが振った「ラケット」がぶつかり、そのときに生まれたエネルギーによって①ボールが飛んで行き、②打ったプレイヤーには「手応え=打球感」が残るわけです。
ボールとラケットがぶつかることで、「ボールが飛んで行く」という現象と「プレイヤーが手応えを感じる」という二つの現象が起きるので、衝突によって生まれたエネルギーは、その二つの現象で消費されたと考えられます。
「打球感」は小さいほうが良い
この場合、ボールとラケットがぶつかって生まれるエネルギー量が同じであれば、「手応え=打球感」が強くなればなるほど、その分、飛んでいく「打球の勢い」は弱くなります。
これについては、フレームショットなどのケースを思い浮かべれば、簡単に想像できるでしょう。
インパクトでガツンという「強い手応え」があったときは、その分、ボールの勢いは弱まるわけです。
衝突で生まれたエネルギーが、強い打球感(=打球衝撃)を発生させることに多く使われてしまうと、その分、ボールを飛ばすエネルギーが減ってしまうわけで、総量が同じ場合は、片方が大きくなるともう片方は小さくなるという関係です。
ですから、逆に、「打った感じがしなかった!」というときに打球は勢い良く飛んでいきます。
これについては、テニスだけでなく、野球やゴルフ等でも同じです。
「衝突のエネルギー」=「打球の勢い」+「打球感の発生」という関係なので、「打球感」が小さければ小さいほど、もう一方の「打球の勢い」が大きくなるという仕組みです。
手応えの分だけ損をする
プレイヤーが同じ運動でボールを打っても、手応えが大きいときは打球の勢いが弱まるので、プレイヤー側が損をしたことになります。
しっかり打っても、手応えが大きいと強い打球にならないので、強い運動がムダになってしまい、「手応えの分だけ損をする」ことになるのです。
逆に、手応えが小さいときは打球の勢いが出て、プレイヤーの運動がムダなく打球に伝わったということなので、「伝達効率の良い状態」だと言うことができます。
手応えを求める
ところが、テニスプレイヤーの多くは、自分から「手応え」を求めてボールを打っているようです。
特に、ハードヒッターほど「打った気がしない」のを嫌う傾向があるのです。
そして、ハードヒッターとまではいかなくても、「強いショットを打つには力を入れることが必要だ」と考えているテニスプレイヤーは、か弱い女性も含めてかなり多いようです。
でも、「打つときに力を入れる」のは、それに見合う「手応えが発生することをを求める」こととイコールなのです。
ワンセットの関係
なぜなら、「力を入れる」ためにはそれに見合う「抵抗」が必要で、「手応え」が何もないところに力を入れることはできません。
硬い壁であれば力を入れて押すことはできますが、相手がカーテンであれば力を入れて押すことはできないわけです。
また、強い「手応え」があるときに力を抜いていると打ち負けてしまうので、「手応え」に負けまいとして自然に力が入ってしまいます。
強い手応えが予想されるときには脱力していられず、反射的に力んでしまうのです。
「力を入れるためには手応えが必要」なのですが、逆に、「手応えがあるから自然に力が入る」という面もあるので、この二つは切っても切れないワンセットの関係です。
なので、「力を入れて打ちたいハードヒッター」は「手応えがない」のを嫌うわけです。
力加減で打球の強さを調節!?
ハードヒッッターでなくても、「自分はあまり力がないから強いショットは打てない」と考えていたり、「力加減で打球の強さが調節できる」と思っていたりする場合も、「手応えの強弱で打球の強弱が決まる」と思っていることになるので、ハードヒッターと同じ誤解をしていることになります。
「力がなければ強いショットは打てない」のであれば、ジュニアプレイヤーの強いショットが説明できません。
腕力が無くても強いショットは十分打てるのです。
また、強い打球も弱い打球も、打ち出されるときには「手応えが小さいほうが良い」というのは共通です。
ボールを打つときに手応えを求めることは、自分の運動がムダになってしまう状態を求めているのと同じなのです。
「手応えがあるから力が入る」が出発点
インパクトに強い力を入れても伸びのある強いショットは生まれず、打球が失速したり、すっぽ抜けのアウトが出たりするのですが、そういう間違ったスイングイメージを持つようになる原因の一つには「不適切なラケット」があるようです。
先述したように、「力を入れるためには手応えが必要」と「手応えがあるから力が入る」とはワンセットなのですが、最初の出発点は「手応えがあるから力が入る」ということのようです。
「合わないラケット=不適切なラケット」で打つと、プレイヤーのパワーがうまくボールに伝わらないのでインパクトの「手応え」が大きくなります。
そして、強い手応えを感じると、その手応えに負けまいとして力を入れて打つようになります。
悪循環が始まる
つまり、最初のスタートは①「不適切なラケット」で、次に、②「そのラケットで打つといつも打球衝撃が強い」ので、その結果、③「力を入れて打つ」というスイングイメージが定着してしまうという仕組みのようです。
こうした経緯で、「手応えがある⇒力を入れる⇒力を入れるには手応えが必要」という悪循環が始まってしまうわけです。
「自分はあまり力がないから強いショットは打てない」と考えている場合も、そう思ってしまうスタートラインには「打球衝撃の強い合わないラケット」があることが多いようです。
そしてさらに、実際には「力を入れても打球の勢いは思ったほど上がらない」ので、「もっと力を入れて打つようになる」という傾向があります。
力を入れて打つ状態になると、それがエスカレートしやすいのです。
不適切なラケットの具体的な内容
打球衝撃が強いラケットは具体的には以下の3つに分類できます。
- ラケットのスイングウェイトが軽すぎるケース
- ストリングの張りが硬すぎるケース
- ラケットの特性とプレイヤーの身体特性が合わないケース
1.ラケットのスイングウェイトが軽すぎるケース
スイングウェイトの数値がある範囲より小さくなると、飛んでくるボールの勢いに負けやすくなり、打球衝撃が大きくなります。
2.ストリングの張りが硬すぎるケース
ストリングの張りが硬すぎたり、飛びの悪いストリングを張っていたりすると、インパクトでいつも強い衝撃を感じる状態になります。
3.ラケットの特性とプレイヤーの身体特性が合わないケース
プレイヤーとラケットの相性が悪いと、プレイヤーのパワーが打球にうまく伝わらないので、打球衝撃が大きくなってボールの飛びが悪くなります。
力を入れて打とうとする状態からの脱出
手応えを求めて力を入れて打とうとする状態から抜け出すには、一番初めの原因である「手応えのあるラケット」を何とかすることが必要です。
ただ、1.「不適切なスイングウェイト」と2.「不適切なストリング・セッティング」については、ラケットを買い替えなくても対処が可能です。
スイングウェイトが軽すぎる場合は数値を増やす調整は可能ですし、ストリング・セッティングは適切な状態に張り替えれば済むことです。
でも、スイングウェイトとストリング・セッティングを改善しても打球衝撃がそれほど弱まらない場合は、3.のフレーム選択を考え直すことが必要になります。
ですが、その場合も、1.のスイングウェイトと2.のストリング・セッティングについてきちんと配慮することが必要です。
モデルの選択が適切でも、スイングウェイトとストリング・セッティングのどちらかがダメなら、トータルではダメだからです。
頭の中のイメージを変える
適切なラケットを手にしたら、次に、頭の中のイメージを変える必要があります。
なぜなら、長い間「手応えを求めて力を入れて打とうとする状態」に陥っていると、適切なラケットを手にしても、それまでと同様に手応えを求めて力を入れて打とうとしてしまうからです。
大切なのは、「手応えの分だけ損をしている」と自覚することです。
合わないラケットは打球衝撃(=手応え)が強いので、プレイヤーは「しっかり打ったという手応え」が感じられるため、それなりの達成感や満足感が得られるようです。
でも、達成感があっても打球は強くならないので、プレー上は手応えの分だけ損をします。
ですから、「手応えなくスルッと振り抜けたショット=達成感のないショット」が最高のショットだというように頭の中を切り替える必要があるわけです。
打球感のワナからの脱出
ゲームの勝ち負けを優先する場合、打球感をあまり感じない状態のほうが有利だという理解を持てば、打球感の好き嫌いでラケットを選ぶのが間違いであることが簡単にわかると思います。
打ったときの手応えがあまりないラケットが、プレイヤーの運動をムダなく打球に伝えるラケットであり、そういうラケットのほうが体力のムダ使いを防げるわけです。
さらに、強い打球衝撃の蓄積は腕の故障につながるので、快適にプレーを続ける上で、手応えの大きいラケットがマイナスであることは間違いありません。
戦力アップと故障防止のために、頭の中をリセットして、打球感のワナから脱出してください。