ラケットのスイングウェイトの解説

「重量」や「バランスポイント」の数値を判断材料にして「振ったときの重量感」を「推測」するのではなく、専用の機械で実際にラケットを振って「振ったときの重量感」そのものを「実測」したほうが、話が早くて、しかも正確です。

テニスラケットの
スイングウェイトについて

テニスラケットには、「重量」と「バランスポイント」のほかに「スイングウェイト」という数値があります。
ただし、この数値については、ほとんどのラケットブランドのカタログには記載がありませんので、ご存じない方もかなり多いと思われます。

スイングウェイトとは、「スイング=振る」と「ウェイト=重さ」ということで、文字どおり「振ったときの重さ」を表します。

長さのあるものの端を持って静止している状態から振り出したり、振っている状態から止めたりするときに必要とされる力のことですが、物理では「慣性モーメント (moment of inertia)」と呼ばれており、テニスラケットの「スイングウェイト」はその通称です。

重量感についての
関心は高い

テニスは、長時間に及ぶプレー中、ずっとラケットを手に持って振り続けるスポーツですので、テニスプレイヤーの多くはその操作感について大きな関心を持っています。重すぎると負担になったり、軽すぎると打ち負けたりするからです。

重量やバランスポイントでは
誤解が生じやすい

そのため、カタログに書いてある「重量」や「バランスポイント」の数値をチェックして、「振ったときの重量感」を知ろうとするのですが、このブログの「テニスラケットの重量と振ったときの重量感の違い」と「テニスラケットのバランスポイントについて」の記事で書いたように、その二つの数値をもとに「振ったときの重量感」を推測しようとすると、さまざまな誤解が生じやすく、正しい判断がしにくいのです。

推測より「実測」

ですから、「重量」や「バランスポイント」の数値を判断材料にして「振ったときの重量感」を「推測」するのではなく、下の画像のように、専用の機械で実際にラケットを振って「振ったときの重量感」そのものを「実測」したほうが、話が早くて、しかも正確です。

重量の位置が問題

スイングウェイトの数値は、重さに比例して、かつ、回転軸から重さのある場所までの距離の二乗に比例して大きくなります。距離の二乗ですから、重量の位置が大きな影響力を持っています。

5gの重量をフレームの中央部分に貼り付けるのと、同じ重量をトップ部分に貼り付けるのとでは、スイングウェイトの増加はトップにつけたほうが中央部分の4倍になります。

でも、グリップ部分に5gの重量が付いたとしても、スイングウェイトの数値は基本的に変化しません。
グリップテープの重量は4~5gありますが、それを巻いたからといって操作性が悪くなったと感じる方が居ないのと同じです。
それに対して、同じくらいの重さのガードテープをラケットのトップに貼ると、とたんに操作性は悪くなります。

トップ付近の
重量の影響が大きい

ですから、ほんのわずかな重量の増減でも、それがラケットのトップ部分で起きると、その影響はとても大きなものになります。

それに対して、同じ重量の増減がグリップ近くで起きても、操作性にはほとんど関係しないわけで、場所が問題なのです。

重量の誤差範囲でも
スイングウェイトの
違いは大きい

カタログに書いてあるテニスラケットの重量設定は、ラケットを生産する上での基準値となるため、当然そこにはある程度許容される誤差範囲があり、「平均重量」とか、300±5gとかの表記になっているケースもあります。

そうした±5g程度の重量の差であっても、それがもし、ラケットのトップ部分で発生した場合は、その影響でスイングウェイトの違いは±20程度になります。
つまり、スイングウェイトの平均値が280のモデルがあった場合、個体差では260~300という範囲になってしまうわけで、重量の誤差が許容範囲内であっても、スイングウェイトの違いはとても大きくなってしまう可能性があるのです。

実際に、同一モデルであっても、スイングウェイトの数値が個体毎に最大で30ポイントくらいの違いが出ることは、それほど珍しくありません。

わずかな重量でも
スイングウェイトは
大きく変化する

私どもが通常行う「スイングウェイト調整加工」で使用する鉛テープの量は、全量でおよそ2~3gですが、それでもスイングウェイトは10ポイント程度変化します。
2~3gといっても、ピンとこないかもしれませんが、官製ハガキ1枚の重さがだいたいそれくらいです。

「そんなわずかな重量で本当に大きな違いが出るのかなぁ」と思われるかも知れませんが、スイングウェイトの10ポイントの違いはほとんどの方がハッキリ感じられるでしょう。
逆に、これ以上スイングウェイトを増やすことは、振った感じが不自然になる可能性があるので、実際にはあまりオススメしていません。

H型の鉛で1個の重さが3gあるものが従来から販売されていますので、それをフェース周りに数個(ということは6g以上になります)付けている方をたまに見かけますが、私どもの判断ではこれは過剰であり、強い打球に打ち負けにくいというメリットはあるにせよ、他の部分で大きなデメリットを背負う可能性が高いでしょう。

プリンスだけが
スイングウェイトの
設定値を記載

最初の部分で、スイングウェイトについては、ほとんどのラケットブランドのカタログには記載が無いと書きましたが、その中で唯一、プリンスブランドのメインアイテムについては、ラケットフレームにスイングウェイトの設定数値の記載があります。数値の頭に「SW」と表記されているものがスイングウェイトです。

フェース周りの重量誤差が±2~3gであっても、スイングウェイトの誤差は±10ポイント程度になってしまうため、スイングウェイトの設定値を明記するのは、生産管理上、実はかなり勇気が要ることなのです。
スイングウェイトの数値を明記すると、それが製品チェックの際の基準になるため、設定された許容範囲外の製品は規格外ということで排除しなければなりません。

フェース部分の重量がほんのわずか増減するだけでスイングウェイトの数値は大きく変わってしまうので、ラケットを生産する上で、スイングウェイトの数値管理は重量の数値管理よりずっと難易度が高いわけです。

2本揃える場合は
スイングウェイトを
合わせたほうが良い

同じモデルを2本以上揃える場合、スイングウェイトの違いが2~3ポイントであれば、それほど違和感はないと思われますが、5ポイント以上の違いになると、操作感やボールの飛びに違いが出る可能性があります。

同じモデルで重さが全く同じものを選んでも、普段のプレーで気に入って使うものとそうでないものに分かれてしまうのは、スイングウェイトの違いが原因かも知れません。

不適切な数値も
出回っている

現在、市場に出ている大人用のラケットのスイングウェイトのバラツキは、250~320くらいの数値範囲になっています。
さらに、同一モデルでも、20~30ポイントのバラツキ範囲(個体差)がありますので、上記の範囲内で重いほうに片寄ったり、軽いほうに片寄ったりしているケースが多く、先ほどの範囲の真ん中くらいを中心にしてバラついているケースは、実際には、あまり多くありません。

数値的には、通常のプレーには適さないと私どもが考えるものも、ラケット市場には出回っています。
そうした不適切な数値のものには、重すぎるものと軽すぎるものの両方があるのですが、確率的には、軽すぎるケースのほうが多いと言えます。

スイングウェイトが軽すぎるとボールに押されやすくなるので、力んで打つようになりやすいでしょう。
フレームの重量が320gであっても、スイングウェイトが260などというケースもあるので、重量が重いから打ち負けないとは限らないわけです。

というわけで、あまり広く知られていないスイングウェイトという数値ですが、実際には、ラケットの使いやすさを左右する重要な役割を持っているのです。

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