テニスは思いどおりには打てない

テニスは思いどおりには打てない
上達への近道

●打ち方を意識的に直そうとする
「自分は無意識的な運動でボールを打っている」などと考えている人は、テニスプレイヤーの中では非常に少ないようです。

ということは、ほとんどのプレイヤーは「自分は意識的にボールを打っている」と思っているはずです。
ですから、自分の打ち方を意識的に直そうとするのが、上達のためのごく普通の取組です。

それが「打ち方を工夫する」ということで、そうした努力をすること無く、ただ漫然とボールを打っているだけでは絶対にうまくならないと信じている方も多いようです。
そのため、ボールを打つときのラケットスイングや身体の動かし方について、いろいろ勉強したり工夫したりするわけです。
でも、これまでそういう「打ち方を工夫しながら考えて打つ努力」をたくさん重ねてきたのに、あまり成果が上がっていないと感じている方は意外に多いのではないでしょうか。

「思いどおりに打とうとすると、とたんにミスが増えて、ミスを防ごうとすると元のスイングに戻ってしまう」ということの繰り返しで、結果は何も変わらなかったという経験はされていないでしょうか。

もしそうであれば、「ボールを打つときの動きは、もしかすると、自分の自由にはならないのかもしれない」と一度は疑ってみても良いでしょう。
そして、「ボールを打つときの動きは、自分の自由にはならない」というのは、ちょっと考えてみれば、ごく当たり前のことだと気付きます

●飛んで来るボールが主導権を握っている
その理由はとても単純です。
「テニスは飛んで来るボールを打ち返すスポーツ」だからです。
飛んで来るボールの動きにプレイヤーのスイングや身体の動きを合わせなければ、まともに打ち返すことはできません。

なので、動きの主導権は常に「飛んで来るボール」が握っています。プレイヤーは飛んで来るボールの動きに一切文句を言うことなく、黙々と従うしかないわけです。
さらに、飛んで来るボールの動き方は毎回違うので、次に打つボールがどんな状態なのかは、そのボールが実際に飛んでくるまでわかりません。

ですから、ボールが飛んで来る前に「ああしよう」「こうしよう」と考えるのは、ちょっとおかしな対応ではないでしょうか。

テニスプレイヤーが要求されるのは「飛んで来るボールの状態に合わせて適切にスイングをすること」なので、ボールが飛んで来ないうちに、打ち返す側のプレイヤーが勝手に「適切なスイング」を決めてしまうのは、どう考えても的ハズレのような気がします。

●自分で自分のジャマをしている
そして、前の記事の「テニスプレイヤーがコート上で無意識的にやっていること」で書いたように、訓練を積んだプレイヤーは、飛んで来るボールに対して身体で覚えたスイングで適切に対応できるのですが、それは、無意識的な運動が自動的に実行されている状態なので、プレイヤーが意識的に動きを変えようとすると破綻します。

ボールを打つときに発生している瞬間的な反射運動はかなり高速で、プレイヤーが意識的に動きをコントロールできるレベルのスピードではありません

ライジングショットをストレートに打ち込もうとしているときに、ラケットのフェースの角度などに意識を向けて「こうしよう」なとど考えたら、そのとたんにボールはあさっての方向に飛んで行くでしょう。

ですから、ボールを打っているときの身体の動きに手を加えようとするのは、自分からミスしようとする試みと言っても言い過ぎではないでしょう。

オートマチックで高速で動いている状態なのに、そのスイッチを切って自分で動かそうとしても、うまくいくわけはありません。

プレイヤーが行う毎回のスイング調節は、ゼロコンマ数秒という非常に短い時間で瞬間的に実行されるので、そういう状況に「プレイヤー側の場違いなワガママ」を持ち込むのは、適切な運動のジャマにしかなりません。

思いどおりに打てるはずのないスポーツで、思いどおりに打とうとすることが最初から的ハズレなのです。

■ミスが出るのは打ち方が悪い
テニスはミスの多いスポーツなので、向上心の有るプレイヤーは何とかしてミスを減らそうと考えます。
そして、「ミスが出るのは打ち方が悪いからだ」と考えて、「それを直せばミスが防げる!」と思うわけですが、この判断の前半部分は正しくて、後半部分は間違っています。

すなわち、「ミスが出るのは打ち方が悪い」というのは正しいのですが、「打ち方を直せばミスが防げる」というのは間違いです。
自分の打球が変なところに飛んで行ったのは、そのときの状況に対して身体の動きが適切ではなかったからであり、そういう意味で「ミスが出るのは打ち方が悪い」という判断は正しいと言えます。

でも、「だから、打ち方を直せば良い」と考えるのは早計です。
なぜなら、動きが適切ではなかったのが事実だとしても、「適切でなかった」のは「その状況に対して」という限定条件が付くわけで、いついかなるときでも不適切ということではありません。飛んで来るボール次第では、ミスしたときの動きで適切に対応できるケースが有るわけです。

「飛んで来るボールに対して、そのときの身体の動きが適切でなかった」というだけのことであり、これは、動くボールを相手にするスポーツではよくあることです。
ミスショットのあとに、「こうやって振れば良かった」というように反省の素振りを繰り返すシーンをよく見受けますが、ミスしたときの不適切なスイングが完璧に修正されても、次に飛んで来るボールが前回と全く同じということはあり得ないので、反省して修正されたスイングが次のショットに適切である可能性は限りなく低いわけです。

●正しい打ち方は毎回違う
ミスショットのあとに打ち方を直そうとするのは、クイズ問題の解答を間違えたときに、次の問題に対して「前の問題の正解」を答えようとするのと同じかもしれません。
「前回と同じ問題が、次に出るはずはないのに」ということです。
飛んで来るボールの状態は毎回違うので、その「飛んで来るボールを目的のところに打ち込むのに適した打ち方」も毎回違います。
ですから、「正しい打ち方」は毎回違うわけです。

飛んで来るボールが要求する打ち方を素早く見つけて、それを素早く実行に移すことが大事なのに、ボールが飛んで来る前に勝手に「正しい打ち方」を決めて、それを実行しようとするのは非現実的な対応だといえます。
ですから、いろいろなクイズ問題に共通の正解が無いのと同じように、どんな状況にも適応できるワンパターンの「正しい打ち方」などはありません
「打ち方」というものについて、こんなふうに柔らかくとらえると、ボールを打つときの身体の窮屈さが減るかもしれません。

●打ち方を改善してもミスは減らない
ゼロコンマ数秒という、ほとんど瞬間的とも言える状況で、打つ前のボールの状態を見極めて、その状態に合ったスイングを選択して実行するという作業は人間ワザとは思えないくらい難しいので、何回かやれば必ず失敗します。
そして、その「失敗」は、動きの時間が合わなかったか、動きの内容が合わなかったかのどちらか、あるいは、その両方です。
ですから、そこで打ち方をいろいろ工夫するのは、かなり場違いな対応と言えるのではないでしょうか。

ミスショットをしたゴルファーが「もっとこういうふうに振れば良かったのに」と素振りをするのはわかるのですが、サッカー選手がキックを空振りしたときに「もっとこういうふうに蹴れば良かった」とキックのマネをするシーンがあったら、「それはちょっと違うんじゃないの」とツッコミたくなります。
「それは蹴り方の問題じゃなくて、飛んで来るボールに身体の動きが合わなかっただけじゃないの!」ということで、正しい蹴り方ができても、ボールが通り過ぎてからでは意味が無いわけです。

止まっているボールを打つゴルフと違って、動くボールを相手にするときは、そのボールの動きにうまく反応できるかどうか、身体が良い位置に入っていけるかどうかがショットのカギを握っています。

先述したように、ミスは「飛んで来るボールに対して、そのときの身体の動きが適切でなかった」というだけのことなので、そこでの正しい対処は、打ち方をあれこれ工夫することではなく、「次のボールに対して適切に身体が入っていけるようにすること」ではないでしょうか。

良いショットになるかどうかは「ボールの動き」と「身体の動き」の二つの関係で決まることなので、その2つの関係を改善することが最重要であり、片方の身体の動きだけを単独で改善しようとしても、、何の解決にもならないでしょう。

●打ち方を気にするとミスが増える
ですから、ミスの原因が「打ち方」にあると考えて、そこを直そうとする対応を続ける限り、ミスが減る可能性は無いのですが、逆に、そうした対応によってミスが増える可能性があります。

ミスを防ごうとして打ち方を気にしながらボールを打つのは、ボールより「打ち方」のほうが気になっている状態なので、打ち方を気にすればするほどボールの把握が甘くなります。
そして、テニスは高速で動き続けるボールに身体の動きを対応させるスポーツなので、ボールの把握が甘い状態では身体の動きが合わなくなって、すぐにミスが出ます。
そして、プレイヤーが自分の身体の動きに意識を向けたとたんに「無意識的な運動」のスイッチが切れてしまうので、自然な動きで打てる状態ではなくなってしまいます。

苦労してせっかく手に入れた「高度で複雑な無意識的運動」を放棄して、初心者のような「意識的な運動」でボールを打とうとすれば、初心者のようなミスが出るのは当然です。

テニスの一番の難しさは「動いているボールを打つ」ことにあります。
高速で動いているボールにきちんと対応できるかどうかが勝負の分かれ目なので、ゴルファーがスイングを気にするように、ラケットの振り方ばかりを気にするのはやめたほうが賢明だと言えます。

●ミスマッチを減らすために必要なこと
ここで、誤解を防ぐために付け加えますが、「打ち方を直す必要など全く無い」と言っているわけではなく、「ミスを防ぐために打ち方を直そうとするのは見当違い」と言っているのです。
多くのプレイヤーにとって、打ち方を直すことは必要です。でもそれは、「ミスを防ぐため」ではなく、「もっと良いショットを打つため」です。
「何だそれは」と言われそうですが、この2つは全く別のテーマなので個別に取り組む必要があります。

勢いのあるショットを無理せずに効率的に打ち続けるためには、それに適した「運動連鎖」 を身に付けることが必要なので、限定された環境での繰り返し練習が必要です。(参照⇒その3.打ち方を直すには
それに対して、ミスショットは「ボールの動きとプレイヤーの動きのミスマッチ」によって発生するので、ミスを防ぐには、それを減らすことをテーマにした取り組みが必要です。

そして、ミスマッチを減らすために必要なのは、ボールを打つときの身体の動きに何らかの固定的なテーマを作って、それを実行しようとすることではありません。(先述のように、それをやると逆にミスマッチは増えます)

ボールの動きと身体の動きのミスマッチを減らすために必要なのは、具体的には以下のような取組です。
「上達への近道」—その2.ミスを減らすために必要なこと
そして、体の負担を減らしてもっと勢いのあるショットを打つには打ち方の訓練が必要です。
「上達への近道」—その3.打ち方を直すには
でも、せっかく上達しても本人には自覚できません。自覚しようとする取組では上達しません。
テニスでは上達を自覚できない


以下はこの記事グループの構成です。

テニスラケットの良し悪しは自分ではわからない

テニスのショットは「無意識的な反射運動」!?

1.打点の高さに応じたスイング軌道の変化

2.ボールのスピードに対応するためのスイング調節

3.ボールの移動方向に合わせたスイング調整

4.飛んで来るボールの回転に合わせたスイング調節

「テニスプレイヤーがコート上で無意識的にやっていること」

「上達への近道」—その1.自分の打ち方は自分の自由にはならない

「上達への近道」—その2.ミスを減らすために必要なこと

「上達への近道」—その3.打ち方を直すには

テニスでは上達を自覚できない

テニスラケットが合っているかどうかは自分ではわからない—まとめ

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ガットの動きが悪いせいで起こるネットやアウトを、全部自分のせいだと思いたい人には、GUT LIVEは必要ありません。
◇ボールが面からこぼれてネット
ガットが動かないと「食い付き感」が生まれないので、インパクトでボールをつかまえられずにポロッとこぼれてネットすることが多くなります。そう、あの惜しいネットは食いつかないガットのせいで、自分のせいではなかったかもしれないのです。
◇スピンで押さえ込めずに浮いてアウト
さらに、インパクトで動いたガットが戻るときに順回転がかかるので、ガットが戻らないと回転が安定せずスッポ抜けのアウトが出やすくなります。逆に、確実に回転がかかればショートクロスやスピンロブなどが打ちやすくなります。
◇打球の深さがバラバラ
ガットの動きが安定せずに、ボールインパクトで動いたり動かなかったり、戻ったり戻らなかったりすれば、フェースから打ち出される打球の角度が毎回変わるので、その影響で打ショットの深さが不安定になります。

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