打球が失速する仕組み

テニスのショット/打球の失速

他人の打球でないとわからない

打球の失速とか伸びるボールとかの表現はよく聞くのですが、その割に、「そんなことも少しはあるんだろうな」くらいの印象で、ハッキリと実感している方はあまり多くはないのではないでしょうか。

でも、こうした現象は確実にあります。
実感がないのは、自分の打球について伸びや失速を感じることが少ないからだと思います。
というのも、プレー中はとても忙しいので自分の打球をノンビリと観察しているヒマはありません。
プレー中に立ち止まって自分の打球を見ていたりしたら打ち合いが途切れてしまうので、プレイヤー自身が自分の打球の状態を正確に把握しようとするのは諦めたほうが良いでしょう。プロでさえ相手に聞くくらいなので。

でも、自分の打球についてはわからなくても、相手の打球については結構わかります。
相手の打球に伸びがある場合、こちらの対応が遅れて返球に失敗しやすくなるのでわかりやすいわけです。
でも逆に、失速する打球については、こちらがただ打ちやすいだけなので意識しにくいこともあります。

動画撮影すればわかる

では、自分の打球の状態を自分で把握する方法は無いのかと言えば、そんなことはありません。動画で撮影すればいいのです。
それも、自分の後ろや横から撮るのではなく、相手コートのプレイヤーの後ろから撮るのが正解で、その動画で、コートの向こう側から飛んで来る自分の打球が、こちらで弾んだときにどれくらい勢いが無くなるかを観察すれば、自分の打球の失速状態がわかります。

失速する打球

失速する打球の飛び方はこんな感じです。
初めは勢いよく飛び出すのですが、ネットを越えて着地する頃にスーッと減速してポトリとコートに落ちます。
スピンでグイッと押さえ込まれて着地するのではなく、飛んでいく力が尽きて着地するわけです。
当然、弾んだ後も元気の無いおとなしいボールなので、相手にとってはとても嬉しい「打ちごろ」の状態です。

相手がアウトだと思うような高い球筋のボールが失速してコートに入るというメリットもごくたまにあるのですが、そのメリットに期待しすぎると、球筋が高すぎない普通の打球の場合は相手からガンガン打ち込まれてしまうというデメリットを見過ごしてしまうかもしれません。

ラケットドックのリピーター

私どもは、ラケットドックで人が打ったボールを観察するのが仕事なので、いつも打球の伸びや失速状態を見ているのですが、そこで気づくのは、ラケットドックに初参加の方とリピーターの方の打球には多くの場合違いがあって、やはり、リピーターの打球のほうが平均して打球に伸びがあります。
リピート参加の方の以前フィットしたラケット(=今はあまりフィットしていないラケット)で打たれた打球のほうが、これまで一度もフィッティングを受けたことがない方より打球の状態が良いというケースが多いわけです。
参照⇒ラケット・フィッティング
それだけ、一般プレイヤーの場合は失速しているケースが多いと言えるでしょう。
そして、打球が失速している方も全く自覚がないわけではなく、「しっかり打っても簡単に打ち返されてしまう」という現象によって間接的にはそれを理解しているようです。

見比べるとわかる

打球の失速が一番わかり易いのは、伸びる打球と見比べるときです。
それも、同じプレイヤーがラケットを持ち替えて球筋が変わるときは簡単に見分けられます。
というのも、同じプレイヤーであれば打球の基本的な初速スピードが変わらないので、後半の失速状態の違いがハッキリするからです。

打球が伸びる仕組み

ラケットから打ち出されたボールは大気の抵抗によって減速し、重力の影響で下に落ちるので、ボール自体に何らかの推進装置が組み込まれていない限り伸びることはありません。
ですから、厳密に言えば「伸びる打球」というものは存在しません。
あるのは、「失速の小さい打球」と「失速の大きい打球」です。

ではなぜ「伸びる打球」という言葉が存在するのでしょうか。
それには目の錯覚が影響しています。

目の予測

ものをハッキリ見るためには対象物に目の焦点を合わせる「ピント調節」が必要ですが、動くもの、特に、近づいたり離れたりという、自分との距離が変わり続けるものをハッキリ見るにはピント調節をやり続ける必要があるので簡単ではありません。
というのも、対象物が素早く動くものの場合は、その動きを目で追うだけでは追い付かないので「目にもとまらない」という状態になるからです。
そのため、対象物の動きをあらかじめ予測してピント合わせをしないとハッキリ見ることができません

これが「目の予測」というもので、動くものを見るときはいつもこの機能が働いています。
ですから、見慣れないものについては「目の予測」が機能しないので、その動きに目が付いていかない状態になってハッキリ見るのが難しいのですが、何度か見れば見慣れるので見失うことが少なくなります。

目の錯覚

相手コートから飛んでくるボールは空気抵抗で減速しながら近づいてきますが、それをハッキリと見続けるには、ボールの減速状態が目の予測に織り込まれていることが必要です。
そして、これが「目の錯覚」が生まれる仕組みです。

というのも、ボールが普通に減速する様子が目の予測に織り込まれている場合は、飛んで来るボールの減速がそれより小さいときは、逆にボールがグンと加速したように感じるからです。
あらかじめ予測しているから、その予測とズレると錯覚が生まれるわけです。
そして、飛んでくるボールに対するプレイヤーの対応も目の予測と同じタイミングで発生することが多いので、失速の大小はプレイヤーの対応の成否に直結します。

予測より失速が大きい場合はボールの到着が予定より遅れるため、準備はできているけれどボールが来ないという状態になるので、来なすぎて泳いでしまうというケースを除けば、こちらが対応を遅らせれば良いだけなので比較的容易です。
この反対に、失速が小さい場合は予定より早くボールが来てしまうので、準備が間に合わなくなってバタバタしてミスに直結します。

重いボール

このように、失速が小さい打球に対してはプレイヤーの対応が遅れがちになるため、いつもの適切な打点より少し差し込まれたところで打つことが多くなるのですが、その打点ではボールから受ける衝撃が強くなってボールが重く感じることが多くなります。
これが「重いボール」と言われるものの正体です。
ボールの重さが物理的に変わることはありませんが、失速が小さい打球は本来の打点で打てなくなるので、思いどおりにコントロールすることが難しくなるくらいの重さを感じるわけです。

しっかり打つと失速する

先述したように、私どもは人が打ったボールを観察するのが仕事なので、プレイヤーの運動強度と打球の関係をいつも見ているのですが、そこで気づくのは逆転現象です。
つまり、プレイヤーの運動が強いときに打球が失速して、プレイヤーの運動が弱いときに打球が伸びるわけです。
言い換えれば、プレイヤーが力を入れてガツンと打った打球は失速して、リラックスしてスルッと振り抜いた打球が伸びます
実際に、力を入れて打つとボールとラケットが激突するようなインパクトになるのですが、それだと、最初はボールがバーンと勢いよく飛んでも、途中から失速してポトンと落ちるような球筋になることが多くなります。
それに比べて、飛んで来るボールの影響を受けずにインパクトでヘッドが走って高速で振り抜けているときに、打球の失速が小さくなる上に順回転の影響でグイッと沈む球筋になることが多いようです。

プレイヤーの負担と
打球の伸びは反比例

ということは、プレイヤーががんばって打っているときは報われないわけですが、がんばっても報われないと、普通はもっとがんばるようになることが多いようです。
その結果、身体の動きだけがどんどんハードになるのに打球がハードにならない「自称ハードヒッター」が生まれることになります。

逆に、力を入れずにスルッと振り抜いたときに相手が差し込まれるような伸びる打球になるのですが、そういう打球を打った側には特別な印象は生まれないのが普通です。
ですから、大したショットは打っていないのに相手がミスするのを見て「今日は相手の調子が悪いのかな」と感じたり、試合に勝てたときも「何だかわからないうちに勝ってしまった」というのが打球が生きているときの現象なので、本当の良いショットには達成感が無いことが多いのです。

報われない状況からの脱出

「力を入れて打つと打球は失速する」という原理を理解して頭の中を切り替えればすれば、報われない状況から脱出しやすくなりますが、それと同時に、ラケットとガット張りのどちらか、あるいは、両方の変更が必要になるでしょう。
というのも、「力を入れて強くつ」という誤ったスイングイメージの元は合わないラケットとガット張りなので、そこを替えないと大元の原因が残されたままなので脱出しにくいわけです。
「ラケットが合わないと⇒プレイヤーの運動がボールに伝わりにくいため⇒打球衝撃が強くなり⇒その手応えに対抗するために力が入るようになって⇒力を入れて打つことが習慣になってしまう」という仕組みを理解することが、報われない状況からの脱出の第一歩です。
忘れないでください。「運動の強度と打球の勢いは反比例する」ということを。

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◇ボールが面からこぼれてネット
ガットが動かないと「食い付き感」が生まれないので、インパクトでボールをつかまえられずにポロッとこぼれてネットすることが多くなります。そう、あの惜しいネットは食いつかないガットのせいで、自分のせいではなかったかもしれないのです。
◇スピンで押さえ込めずに浮いてアウト
さらに、インパクトで動いたガットが戻るときに順回転がかかるので、ガットが戻らないと回転が安定せずスッポ抜けのアウトが出やすくなります。逆に、確実に回転がかかればショートクロスやスピンロブなどが打ちやすくなります。
◇打球の深さがバラバラ
ガットの動きが安定せずに、ボールインパクトで動いたり動かなかったり、戻ったり戻らなかったりすれば、フェースから打ち出される打球の角度が毎回変わるので、その影響で打ショットの深さが不安定になります。

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