「良いラケット」は存在しない
「良いラケット」は
存在しない
「何か良いラケットはないか」と、多くのテニスプレイヤーが熱心に探しています。
そういう方にこんなことを言うとガッカリされるかも知れませんが、「良いラケット」というものは存在しません。
あるのは「合うラケット」と「合わないラケット」だけです。
言葉を換えると、「良いラケット」は確かにあるのですが、それはプレイヤー1人1人で異なるのです。
ですから、共通して誰にでも共通する「良いラケット」は存在しないのです。
ラケットはプレイヤーを助けない
多くのテニスプレイヤーは、テニスラケットについて過剰な期待を持っているようです。
スピンのかけやすいラケット、打球の威力が増すラケット、コントロールしやすいラケット等々、ラケットがプレーに何らかのプラスアルファをもたらしてくれることを期待するわけです。
でも、カーボンのパイプフレームにストリングを張っただけという単純な構造のテニスラケットには、スピンをかけたり、打球をコントロールしたりという、プレーをアシストするような高度なで便利な機能は付いていません。
ラケットはプレイヤーの邪魔をする
テニスラケットにはプレーを助けてくれる機能はないのですが、その反対に、プレーを邪魔する影響力はしっかり持っています。
ランニングシューズでも、実力以上のタイムが出せるシューズはありませんが、サイズの合わないシューズでは実力どおりの走りができません。
速く走れるシューズはないのに、うまく走れなくなるシューズはあるのです。
それと同じように、合わないラケットでは思いどおりのプレーができなくなります。
できるはずのことができなくなるラケット
パワーレベルが合わないラケットでは、毎回のショットでプレイヤーが飛びを調節しながら打たなければならないので、同じ運動を安定して繰り返すのが難しくなり、ミスが増えます。
また、プレイヤーのパワーがうまく打球に伝わらないラケットでは、力を入れて打っても勢いのない打球しか生まれません。
実力以上のタイムで走れるシューズはないのに、何らかの不都合で実力どおりの走りができなくなるシューズはたくさんありますが、それと同じで、「本来できるはずのことができなくなるラケット」はたくさんあるのです。
できることが素直にそのままできるラケット
それらの問題が全て解決されれば、プレイヤーの運動が効率良くボールに伝わるようになるのですが、その状態は何かが新たにもたらされたのではなく、プレイヤーの持っている能力が素直に発揮できるようになっただけです。
「合うラケット」は、プレーにプラスアルファをもたらすものではなく、できることが素直にそのままできるだけなのです。
余計な運動調節はプレーの障害
それに対して、合わないラケットはプレイヤーにいろいろ余計なことをさせます。
コート上を忙しく走り回りながら、微妙なタイミングでボールを打ち返し続けなければならないテニスのようなスポーツでは、余計な運動調節はプレーの大きな障害になり、運動の正確性と打球の威力が低下します。
スピンのかけやすいラケット、打球の威力が増すラケット、コントロールしやすいラケット等々は実際にあるのですが、それは、あるプレイヤーに対してラケットとストリング・セッティングがピッタリ合っている場合に「限定的に訪れる良い状態」であって、誰にでもそういうメリットをもたらすモデルがあるということではありません。
ですから、ラケット選択のキーになるのは「良いか悪いか」ではなく、「合うか合わないか」なのです。
そういう意味で、自分の靴のサイズを選ぶ時に「何か良いサイズはありませんか?」と人に聞くことがあり得ないのと同じように、「何か良いラケットはありませんか?」と人に聞くのは変なのです。
「良いラケット」ではなく「合うラケット」
多くの方が「良いラケット」を見つけようと、メーカーのホームページやカタログを見たり、ネットで情報を集めたり、テニス仲間に聞いたりと、いろいろな方法で情報収集していますが、この方法はあまり有効ではありません。
メーカーの提供する商品情報には、ラケットの性能について肝心なことは何も書いてありませんし、ネットの口コミでは、いろいろな人がいろいろなことを言っている、ということが分かるだけです。
100人のテニスプレイヤーが絶賛するラケットがあったとしても、それが自分に合わなければ、そのラケットには何の価値もありません。
「良いラケット」ではなく「合うラケット」を探そうとすることが、快適なプレーへの第一歩です。